レポート

パート4:NPO・NGOが動かす世界〜NPO・NGOと企業のパートナーシップ〜(問題解決のヒント「協働」のチカラ )

NPOと企業の協働は社会を変えるか?

11月9日(火)

長沢 恵美子 氏(社)日本経団連事業サービス 総合企画・事業支援室 室長

企業とNPOの関係の変化

長沢 恵美子 氏 私は、現在起こっている地球環境問題や社会問題の課題に対し、企業とNPOの協働が風穴を開け、解決に結びつける可能性があると思っています。

 1980年以前、企業とNPOは一方通行の関係しか持たず、NPOが企業活動を監視、批判し、時には敵対的に行動するという対峙型と、NPOのミッションと企業の社会貢献活動の理念が一致するものについて、企業がNPOに寄附などをする支援型の2タイプがありました。近年、この関係性が双方向に変化してきています。社会の課題を中心に据え、対話、コミュニケーション、連携を取っていく方法や、企業とNPOの二者だけでなく、コミュニティ、政府、その他のグループなど多様なステークホルダーが関わるスタイルが生まれてきているのです。

企業とNPOの接点

長沢 恵美子 氏 まず、企業とNPOの接点の一つである「社会貢献活動」という言葉を、経団連の社会貢献活動の担当者は、「自発的に社会の課題に取り組み、直接の対価を求めることなく、資源や専門能力を投入し、その解決に貢献すること」と定義しています。経団連が会員企業等を対象に行った調査によると、NPO/NGOに対する認識について、「社会貢献活動のパートナーである」と答えた企業が、1996年度には37.1%だったのが、2005年度には57.0%と半数を越えました。経団連の社会貢献担当者懇談会では、NPO/NGOは、企業に先駆け、課題のありかをつきとめ、課題に対処するための、現場におけるノウハウ、専門知識、必要な資材を備えていると認識しています。

長沢 恵美子 氏 NPOと企業のもう一つの接点は「社会的責任」です。本来、CSR(Corporate Social Responsibility)=社会貢献ではなく、企業活動全体に社会的視点を取り込むことがCSRです。経団連では、CSRは企業経営そのものであるという言い方をすることもありますが、それくらい経営と密接な関係があるのです。2010年11月1日に、組織の「社会的責任 (Social Responsibility ; SR)」に関する国際ガイダンス規格であるISO26000が発行されました。そこではSRを以下のように定義しています。

 組織の決定及び活動が社会及び環境に及ぼす影響に対して、次のような透明かつ倫理的な行動を通じて組織が担う責任
―健康及び社会の繁栄を含む持続可能な開発の貢献
―ステークホルダーの期待への配慮
―関連法令の順守及び国際行動規範の尊重
―組織全体に取り入れられ、組織の関係の中で実践される行動

 もともと異種・異質である企業とNPOが協働していくためには、何が必要になるでしょうか。  2002年に日本経団連社会貢献フォーラムにおいてご講演された田尻佳史氏(日本NPOセンター)は以下の8つのポイントを挙げられました。

  • 1.自己の確立:自分の立場や状況を理解・確認する
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  • 2.互いの理解:双方の同じ部分・違う部分を充分に理解する
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  • 3.自己の改革:条件を満たしていくために、自分自身も変わる
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  • 4.目標の明確化:双方の対象、目的を共通に理解
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  • 5.対等な関係:対等な立場で課題を解決
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  • 6.相互の透明性:双方の関係が透明であるための情報公開
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  • 7.関係の時限性:目標を持って活動に取り組み、達成すればその関係を打ち切る
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  • 8.相互の評価:互いに活動の評価を行う

企業とNPO〜今後の方向性

長沢 恵美子 氏 近年、企業とNPOが双方向の関係性を持つようになってきましたが、今後、その関係性をさらに発展させていかなくてはなりません。今や社会的課題は国境を越え、多様化・複雑化し、国家や国際機関だけでは解決不可能です。そのため、NPO、市民、消費者、労働者、企業など、社会のさまざまなセクターのアクションが必要です。企業には蓄積された技術、設備、ノウハウ、情報があり、NPOには問題発生現場に基づく専門性、当事者性、提案力がありますこの2つが協働することによって、課題解決の速度と効果を最大化することができるのではないでしょうか。また、このような一対一の協働だけでなく、ある課題に関心を持つさまざまな立場の組織や個人がその解決のために協働して取り組む「マルチ・ステークホルダー・アプローチ」という手法もあります。このように、柔軟な発想に基づいて、協働の取り組みがさらに発展していけるよう、今後も経団連として様々なパックアップをしていく必要があると考えています。