「良い再生可能エネルギー」を選ぶということ市民がつくる脱炭素社会
再生可能エネルギーは「導入すれば良い」という時代から、「どのような再エネを選ぶか」が問われる時代へと移行しています。環境破壊型のメガソーラーのように、使い方によっては自然や地域に負荷を与えるケースも生まれています。本講演では、再エネ=善という単純な構図を超え、「良い再エネ」とは何かを問い直し、UPDATERが推進する「共生する再エネプロジェクト10」の取り組みを通じ、自然・地域と共生する電源のあり方や、市民一人ひとりの「選択」がどのように社会を変えていくのかを解説します。顔の見える電力を軸に、脱炭素・農業支援・地域創生など良い再エネがつなぐ新しい社会のかたちをご紹介します。
私のウェルビーイング家族との時間がご褒美です。
講座ダイジェスト
生活を脅かし始めた気候変動
洪水や豪雨、気温上昇などの気候リスクが顕在化する中、子どもなどの社会的に弱い立場の人たちが、リスクの影響を大きく受ける懸念があります。また、熱中症などの健康への悪影響も顕在化しています。
気候変動対策としては、変動が起きないように再生可能エネルギー(以下再エネ)を増やしてCO2を減らす「緩和」が大切です。ところがすでに気候変動が起きているので、今すぐ「適応」対策を行うことも重要です。対策によって2050年、2100年に向けた気候変動の影響が大きく違ってきます。また、2035年までの10年間がティッピング・ポイントと言われており、その真っただ中にいる私たちの行動が大切です。
2050年にCO2をゼロにするには、エネルギーをゼロエミッション発電の電気に変えていくことが圧倒的に重要です。しかし、日本の電源構成はオイルショック前の1973年から現在まで、輸入燃料に依存する火力発電が7~8割を占めます。そのためロシアがウクライナに侵攻した時にガスと電力価格が高騰。その後に落ち着いたものの、アメリカによるイラン攻撃を受けて、再びエネルギーと電力の価格が上がっています。
2010年以降の電気料金を示すグラフからは、直近も上がってきていることや、海外からの原油価格が上がるとガス価格も上がり、ガス価格が上がると電気料金も上がることがわかります。
再エネを増やしたヨーロッパとの違い
ロシアから大量にガスを輸入していたヨーロッパでは、ウクライナ戦争によりガス価格が高騰し、電力価格が大幅に上昇しました。2026年もイラン攻撃の影響を受けてガス価格などが高騰しましたが、電力価格は大幅に下がっています。ウクライナ戦争でエネルギー危機を迎えたヨーロッパでは、その後に再エネを大幅に増やしたため、エネルギーの強靭化が図れたのです。一方の日本は引き続き火力発電の依存度が高く、海外で戦争が起こるとエネルギーと電力価格が上がる構造が残っています。
日本の火力発電の依存を如実に表すのが、4年以上続く総額14兆円に及ぶ化石燃料への補助金です。化石燃料はほぼ100%輸入のため、このお金は日本国内に残りません。もしもこの14兆円を太陽光発電の投資に回していたら、日本全国に導入されている太陽光と同規模の太陽光を新たに導入できていたという試算があります。
貿易収支のグラフを見ると、貿易黒字で稼いだ年間30兆円を、化石燃料や食料の購入に充てていることがわかります。今後稼ぐことが難しくなってくると、海外に化石燃料の大半を頼る状況は、非常にリスクが大きいと思います。
環境と共生する自然エネルギーとは
太陽光は近年、地域に迷惑をかけている例が発生しています。そのような開発をせずとも、太陽光は農地や農業施設、駐車場の上、住宅・スーパーや工場の屋根などに設置できます。特に環境に負荷をかけない太陽光として注目されているのが、ソーラーシェアリングと呼ばれる営農型太陽光です。
営農型太陽光の可能性
日本では農業人口が減る中で平均年齢が年々上がり、農業の継続が難しくなっています。解決策の一つが営農型太陽光です。畑や水田の上に3~4mの高さと隙間を空けて太陽光パネルを設置するもので、農業を続けながら発電を行える上に、カーボンニュートラルや生物多様性への配慮、地域活性化、農業継続といったメリットを受けられます。
営農型太陽光を日本の農地のわずか5%、22万haに設置すれば、約2,000億kWhを発電できます。これは国内の総電力量の約2割をまかなえる規模で、農地の2割程度を使えば日本全体の電力をまかなえるポテンシャルがあります。また、営農型太陽光を活用することで耕作放棄地を再生できます。
火力発電は建設費や運転維持費こそ国内で循環しますが、6~7割を占める燃料費は海外に流出してしまいます。それに対して営農型太陽光は、全コストのうち輸入する太陽光パネルなどの設備費が占める割合は2~3割程度に過ぎず、工事費、営農、発電所の維持管理費はすべて地域や国内で循環します。
また、農業は大変なのに自然災害なども重なって収入が安定せず、なかなか跡継ぎが見つからないといった課題がありますが、営農型太陽光は発電収入によって収入が安定します。新規就農の場合も初年度から発電収入があり、経営の土台が安定します。さらに、発電した電力を活用できるため、スマート農業などとの親和性が高いのも特徴です。
営農型太陽光(ソーラーシェアリング)は、千葉県発祥の技術です。その地域で取り組む千葉エコ・エネルギーさんをはじめ、オーガニック農業とアニマルウェルフェアに取り組む例、中山間地の荒廃農地を観光農園に再生した例、自然栽培米を使ったプレミアムな日本酒を作る例、ペロブスカイトパネルを採用した例、福島原発事故で離農した後、営農型太陽光で農業に再挑戦している例、100年続く梅農家さんの例など、さまざまな事例が生まれています。
UPDATER(みんな電力)の取り組み
私どもは「コンセントの向こう側に思いをはせて電気を使いましょう」というコンセプトのもと、電気生産者の思いを知ってほしいと考え、顔の見える電力という取り組みを行っています。現在では全国1,100カ所以上の再エネ発電所から電気を調達し、家庭・企業や、新電力会社に電力を融通しています。
また、良い再エネを増やすことを重視しており、地域環境への影響や地域との合意形成、情報開示といった観点をクリアした再エネ電力を調達することを重視しています。
さらに、コウノトリを育む農法や、酒造会社の酒米用水田、Jリーグ水戸ホーリーホックさんなどの営農型太陽光、TBS日曜劇場の「VIVANT」の番組制作に使われる「VIVANT感動発電」といった数々の取り組みに参画しています。
リユースパネルを活用した地域循環モデル
太陽光パネルのごみ問題への対応も大切と考え、世田谷区の廃校の屋根にリユースパネルを活用した太陽光発電所「じりじりリユース発電所」を設けました。区民に太陽光の電気を供給しているほか、マンションに住む方でも遠隔地の区画を契約できる「わたし発電」サービスを始めています。
今日からできる具体的なアクション
電気を再エネに切り替えれば、家庭から排出されるCO2を半減できるので、自ら太陽光発電を行うことが効果的です。災害などの停電時に電気を使い続けられるメリットもあります。屋根に設置ができない方は、弊社のような再エネ比率の高い電力会社から電気を買う方法があります。
海外で話題になっているベランダソーラー
今、ドイツの約1割の世帯では、ベランダに設置した太陽光パネルでの発電が始まっていて、ヨーロッパ各国やアメリカでも増えています。買ってきた太陽光パネルとインバーターを設置し、家のコンセントにつなげばその日から使えます。日本では制度上、小規模な太陽光パネルでも専用配線や電気工事士による工事や、一般送配電事業者への申請手続きなどが必要で費用もかかります。技術的には日本でも可能なので、制度が変わって可能になることを期待しています。
今日お話ししたように、戦争によってエネルギー価格と電気代が上がる状況を変えていくべきだと思います。世帯平均で年間12万円に及ぶ電気を自分で発電する、再エネ電力を買う方向にスイッチできれば、未来への投資にもつながると思います。それには一人ひとりの行動が不可欠ですので、皆さんもアクションを実行してください。
ここからは講義中に集まった質問と回答の一部を掲載します
FIT制度は導入当初と比べて買取価格が大きく低下していますが、国の支援がなくても太陽光のコストは劇的に下がっています。産業規模の太陽光ならば補助金なしでも、企業が買う電気代よりも安いか同程度になっています。家庭用はケース・バイ・ケースですが、太陽光を設置すると約10年で投資を回収でき、その後は電気代が無料になるフェーズに入っています。

当初はそういった不都合があったようですが、改良が重ねられてきました。今では例えば幅は4m取る、高さは3m以上にするといった仕様が確立しています。さらに最近は農機具の作業のじゃまにならない1軸式の架台や、じゃまな時に閉じられるパネルも増えてきています。

ヨーロッパでは各国の自然条件に合った再エネが進められています。それに対して日本は日射、風、バイオマスなど自然エネルギーの賦存量が十分にありますが、制度・政策面で課題があり、国がより本気になる必要があると思います。また、転換には「日本には再エネが豊富にあり、それによって農業やエネルギーの強靭化にもつながる」といったマインドセットも大事です。
