異常気象の未来予測どうなる地球 どうする日本
日本の四季が失われ始め、夏と冬だけになる「二季」が、昨年の新語・流行語大賞を受賞しました。言葉の生みの親として、異常気象がなぜ増えるのかについて、近著の「異常気象の未来予測」のツボを深掘りしながら語ります。日本は世界有数の「スペシャル異常気象」地帯。温暖化は「沈みゆく熱帯の島の他人ごと」ではなく、「日本のわがごと」。二季が流行語となった今こそ、世論の転換点なのです。
私のウェルビーイングボクは、「流行を追わず、役に立たないことを、好奇心の趣くままに学ぶ」を貫いて生きてきた。それがわたしのウェルビーイングとなっている
講座ダイジェスト
海面水温の上昇が招く猛暑
昨年の新語流行語大賞で「二季」という言葉が選ばれました。今や日本は長い夏と冬があって、秋と春が縮んでいるという意味です。今日はなぜ二季になっているのかをお話しします。
これは日本周辺の海面水温が一番高くなった昨年7月、海面水温が平年に比べてどれぐらい高いか低いかを表した図です。日本の周辺は非常に海面水温が高いことを示し、真っ赤です。このように日本列島を囲む海面水温が高いので、海から熱と水蒸気が上がってきて、暑くてジメジメした空気が吹いているために猛暑になっています。しかも比熱の大きい海水はいったん上がると簡単には冷えません。こういう状態が4年間ほど続いています。冬は海で水蒸気が蒸発して雲になり、そこに寒波がくるので雪が増えます。このように日本が二季化している原因の1位は、日本周辺の海水温が異常に高いことです。
今年の8月22日の世界の海面水温の図からは、日本付近の海面水温が世界でも1、2を争うほど、異常に高温なことがわかります。地球全体でも低いことを示す青がほとんどありません。地球温暖化で海面水温が世界全体で上がっています。
海流と大気の流れが招く日本の暑さ
その偏西風が去年も今年も南北に大蛇行しています。偏西風は北極の寒気と赤道の暖気の温度差が大きいほど強く吹き、速度が遅いほど大蛇行しやすいのが特徴です。近年は温暖化によって北極の雪や氷が減り、大地が黒っぽくなったために太陽光と熱を受けやすくなっています。そのため赤道との温度差が縮まり、大蛇行しています。
この図のような場合には、日本付近もヨーロッパも北米も熱帯の暑い空気に覆われます。そのような場所には時計回りの回転があり、高気圧になりやすいのが特徴です。その高気圧に覆われるため日本が暑いのではありません。高気圧は下降気流で、圧力鍋のような効果によって地面付近の熱気を上に逃しません。そのため熱気がより強まっているのです。また、周囲が海のためにたくさんある水蒸気も下降気流に抑えられ、夏がじめじめして暑い原因になっています。
暑くなりやすい日本の位置
日本はユーラシア大陸の東端で東側は海です。海よりも陸の方が温暖化しやすく、大陸では40℃超えが当たり前になっています。ヨーロッパからそれらの熱をもらい受けてきた偏西風が、最終的にゴールするのが日本です。しかも、黒潮の影響を受けています。つまり日本は陸からも海からも暑さにさらされているのです。
温暖化で豪雨が増える理由
ちなみにモンスーンジャイアは、季節風のモンスーンと貿易風がぶつかることでできる渦です。今年は温暖化でモンスーンが強まって東向きに吹きました。また、貿易風が弱いことも重なったためにモンスーンシャイアが発生しました。そこで台風がたくさん発生した上に逆まわりの循環が作られたため、線状降水帯や、過去に一度もなかった逆走型の台風が発生しました。
スーパーエルニーニョは、南米沖の海面水温が極端に高い現象のことです。熱を大気に吐き出す効果があるので気温上昇を招き、過去には世界の平均気温が階段状に上がった時に発生しています。このスーパーエルニーニョの発生頻度が上がっています。私はわれわれが一度も体験したことないような気候になってしまうかもしれないと感じています。
温暖による被害は人災
日本で熱中症によって亡くなる人は年間約2000人、豪雨で亡くなる人は年間約100人です。また、お米の価格が乱高下しているのは、温暖化でお米の収穫が悪化したことが原因で、世界中でも食料価格が上がっています。これらは人類がCO2を増やすことに無頓着だったことが原因の人災と言えます。
実はCO2はある一定の温度(ティッピングポイント)を超えてからあわてて減らしても遅いのです。その温度は研究によって幅がありますが、約100年前に比べて1.5℃から2℃ぐらいです。実はすでに1.4℃を超えていてギリギリです。温暖化を抑える=気候変動の「緩和」によってCO2を減らせば、10年、20年かけて徐々に温暖化がおさまっていくので、その間は気候変動に「適応」していく必要があります。
長期的には経済を優先するよりも、CO2を減らすことに投資した方が得をしますが、日本人の気候変動対策意識がとても低いのが気になります。各国で「気候変動対策が生活レベルを上げるのか下げるのか」を調べたところ、欧米で上げると答えた人が81~67%であるのに対して、日本は17%と異常に低いです。また、気候変動対策は生活レベルを脅かすという人が60%もいます。
「温暖化問題は熱帯地方の沈みゆく国の問題、北極で困るのはせいぜいシロクマ」という人が多いですが、それは違います。豪雨災害も猛暑もわれわれが起こしていて、日本が一番困っています。災害復旧でお金がかかる、医療費がかるなど国益も損ねます。日本は一番温暖化が激しく異常気象が大きい場所ですから、CO2を減らす面で世界のトップランナーにならなければなりません。
温暖化対策をするというと「意識高い系」と言われがちですが、四季がなくなるのはほぼ全員が嫌だと思うので「二季が嫌じゃないですか」と言って世論を変えていくのがいいかもしれません。はびこっている温暖化フェイクにもだまされず、今日の私の話をなるべく多くの方と共有していただきたいと思います。
ここからは講義中に集まった質問と回答の一部を掲載します


電気自動車や太陽光パネルをつくるにしてもサプライチェーンの中で大量のCO2が出るから意味がないという研究者もいたりしますが、専門的な知識を持った方でも気候変動についてストレートに前向きになれないことがあるのはどうしてなのでしょうか…。
人為による二酸化炭素の増加が、温暖化や異常気象の原因であることには薄々感じていても、それを認めてしまうと、自分も地球環境を壊す加害者の一人となってしまう。それがイヤなので、「温暖化していない」とか、「温暖化しているのは事実だが、原因は二酸化炭素以外にある」という、だましのフェイクに引っかかるのだと思います。
学校教育も一因だと思います。気象や気候問題を習わないまま、大人になった人がほとんどです。
ガソリン自動車も、製造過程やサプライチェーン過程で大量の二酸化炭素を出します。製造から走行、そして廃棄までのトータルな二酸化炭素排出量のことをLCA(ライフサイクルアセスメント)といいます。製造時は電気自動車の方が多いですが、電気自動車のLCAはガソリン車よりも低いので、ご安心ください。自動車を、ガソリン車から電気自動車へシフトすることで、脱炭素をする方向へと進みます。電力会社発電の再生可能エネルギーの割合が増えれば増えるほど、電気自動車のLCAはさらに減少します。
異常気象の原因はさまざまです。昔も異常気象は発生していました。地球温暖化は異常気象を増幅させたり、その発生頻度(確率)を上げたりしています。気象現象は、自然の揺らぎが大きい現象です。温暖化以前では、異常気象はその気象の揺らぎが偶然大きい時に「ごく希」に発生していました。温暖化は、「ごく希」にしか起きない現象を「日常化」させるのです。サイコロを振って、1の目が10回連続出ることは、偶然でも起こりえます。温暖化とは、1の目が出やすくなるように、サイコロ(地球)に細工をすることと似ています。だから、ある異常な現象の原因は温暖化だけでは起こらないのです。(温暖化×自然の揺らぎ)で起こります。
気象学や気候科学の専門家で、温暖化懐疑論を展開する人を僕は知りません。気象や気候の専門家以外の「先生」が、そのような発言をしているのだと思います。

悲しいかな、思い付きません。意欲のある高校の先生はいますが、そのような先生に頼るのは拡がりを持ちませんし、持続できません。地学必修と総理大臣が言えば、直ぐに変ります。昔、故安倍総理が、世界史を必修にしたように。しかし必修にした以降、歴史好きが増えたとは思えません。
僕は好きではないのですが、入試を「使う」方法もあります。それは、大学入試や高校入試、公務員試験や入社試験(面接)で、気候や温暖化を問う問題をたくさん出題することです。学歴至上主義の親世代が本気になるでしょう。私ごとで恐縮ですが、僕の本「異常気象の未来予測」が、某大学の国語の入試問題や、某高校の面接の入試問題に採用されました。世の中では、少しだけその傾向が出てきています。

講演でも話したように、「温暖化対策=規制=損」と考える人が多いことが、日本では意識の低さに現れているのでしょう。日本が「儲かる温暖化対策システム」を、世界に先んじて構築すれば、「温暖化対策=規制=損」という呪縛から解放されます。脱炭素した方が、世界全体の経済が「長期的には」得することは、多くの論文で示されています。短期でも「お得」になる政策(行政の後押し)が望まれます。行政は法律で動きます。法律は国会議員が作ります。国会議員は、国民が選びます。やはり国民大多数の意識の変化が重要となります。「二季」はそのためのきっかけとなればと思って考えた言葉です。二季化は、現在の経済基盤を壊すパワーを持っています。
ちなみに、一人当たり換算の二酸化炭素排出量は、中国は日本とほぼ同等で、インドは日本よりもかなり少ないレベルです。だから中印を批判するのはおかしいです。アメリカは一人当たりの数値でも上位です。トランプ氏は、「儲かるか儲からないか」でdecision makingする人と僕は感じています。「脱炭素は儲かる」と彼が思うようになれば、瞬時に政策を180度変えるのではないかと、実は密かに期待しています。問題は、彼にそれを知らせるにはどうしたらいいかです。アメリカでは、気候問題は世論を二分する政治問題にもなっています。欧州でもそうです。だから日本はアメリカを批判できる立場には無いですね。日本は、いまだに、「温暖化対策=規制=損」です。周回遅れです。
