テーマわたしと地球のウェルビーイング〜今日から変える、みんなの未来〜

市民のための環境公開講座は、市民の皆さまと共にSDGsをはじめとする地球上の諸問題を理解し、それぞれの立場でサステナブルな未来に向けて具体的に行動することを目指します。複雑化・深刻化する地球環境の変化の中で、自然の美しさにふれ、こころのゆたかさを保ちながら環境問題に対し、未来志向で取り組んでいくヒントを探ります。

無料のオンライン講座として通常講座全9回および特別講座を開催します。

農業が盛んな茨城県をホームタウンとする水戸ホーリーホックは、地域が抱える農家の高齢化や耕作放棄地の増加に向き合うため、4年前から農業に取り組んできました。現在は取り組みをさらにアップグレードし、気候変動などの社会課題の解決に向けて、ソーラーシェアリングを活用したGXプロジェクトをスタートさせ、電気は地域の道の駅へ売電し、農作物は試合会場などで販売するなど、地域循環共生圏の確立を目指す取り組みについてお話します。

私のウェルビーイングSUPが趣味で、仲間とSUPクルージングすることが好きです

講座ダイジェスト


地球温暖化とサッカーへの影響

地球温暖化は皆さんもご存じのようにいろいろな問題を招いています。サッカー界も台風の激甚化や集中豪雨の多発などによって試合の中止が増えています。2018年を境に中止された試合は5倍以上に増えました。



健康面でも熱中症や水分不足による体への影響が非常に高まってきています。2018年以降は熱中症による緊急搬送の数が増加傾向にあるため、JFA(公益財団法人日本サッカー協会)からは、育成年代である子どもたちの、夏場の試合を可能な限り制限するよう通達がだされています。また、今年からワールドカップでは、ハイドレーションブレイクという給水タイムが設置されました。




Jリーグでは2026~27年シーズンに秋春制が始まります。これまでは2~3月に開幕し、10~11月に終わっていましたが、選手の走行距離が6~9月に20%程度も低下していることが分かりました。それに対してヨーロッパのリーグは8月の後半に始まって5~6月の頭に終わります。リーグ戦が進むと選手のコンディションが上がっていき、疲れがたまってきた後半に少し落ちてくることがわかっています。つまり日本では暑さが選手のパフォーマンス低下に影響し、代表チームの強化にも影響が生じているため、秋春制への移行を選んだのです。




Jリーグの取り組み

2018年に開催された国連のCOP24では、ファンへの影響力が非常に大きいスポーツ団体に「イニシアチブをとっていろいろな発信をすることで、ファンサポーターや関わる方たちの意識を変えて、行動変容を起こしていってほしい」といったメッセージが出されました。それを受けて日本では2021年に環境省とJリーグが連携協定を結び、Jリーグが取り組みをリードしていくことになりました。



また、Jリーグは「気候アクション」、「インクルーシブの社会づくり」、「地域コミュニティーの醸成」に取り組んでいくことを表明するとともに、気候アクションロードマップを作りました。さらに、元日本代表選手らが参加するYouTube動画で、気候アクションの大切さを伝えることなども率先して行っています。加えて2025年に日本財団とJリーグが連携協定を結び、日本財団から受けた資金をJリーグ経由で各クラブに分配。気候アクションにつながる取り組みを行う流れができました。




ヨーロッパの5大リーグで採用されているSPL(スポーツポジティブリーグ)への参画も決定しました。各クラブの気候アクション効果を評価指数によって数値化するものです。今年の1~6月に各クラブが行った12項目に関する取り組みが評価され、11月にランキング(20位まで)が発表される予定です。順位が付けられるものの、上位クラブの取り組みやいいポイントなどの情報をみんなで共有し合い、数年かけて全クラブができるようにしていくのが目的です。




水戸ホーリーホックのカーボンニュートラル宣言

私たちは今年3月に意識表明として「2050年カーボンニュートラル宣言」をしました。その後はパートナー企業や自治体とお話をする中で宣言が話題になる機会が増えて「きちんと応えなくてはいけない」という意識が高まりつつあります。



また、クラブが日常業務などを通じて排出するGHG(温室効果ガス)量をScope1~3に当てはめて算出。Scope1~3の全体で1,075トン、Scope1、2で全体の14%、Scope3が86%を占めていることなどが明らかになりました。



Scope3の中で高い数字を示したのが、グッズの仕入れに関わる38%と、ホームゲーム運営に関わる26%です。フロントスタッフ、アカデミーの試合、トップチームなどの移動由来が多いこともわかりました。このような数字が出てきたことで電車を使う、相乗りするといった対策を考えられるようになりました。また、6月まで使っていたスタジアムでの、ファンサポーターの移動に関わるCO2排出量も算出したところ、2024年で1,000トン近いことが分かりました。そのため自転車で来てもらう、シャトルバスはEVバスを導入するといった対策を考えつつあります。



気候アクションとして、ホームゲーム時や地域のイベントで行うフットダーツなどのゲームで、気候アクションをテーマにしたクイズを答えてもらうといった工夫もしています。正解するとより多くゲームができるようにすることで、子どもたちに新しい常識を提供していこうとしているのです。配布するノベルティもプラスチックを再利用したエコバッグなど、少しでも意識醸成につながるように配慮しています。さらに、ファンサポーターが365日取り組めるよう、DXを活用したオンラインゲームもスタートしました。日頃のエコ活動をポイント化することでランキング付けし、非売品グッズの贈呈、試合への招待などを行っています。




水戸ホーリーホックのGXプロジェクト

現在、チームで注力しているのが気候変動などの社会の課題と、茨城地域の課題を掛け合わせた取り組みです。地域では農家の高齢化、それによる耕作放棄地の増大、過疎化による経済の衰退が大きな課題になっています。そこでこれまでも行っていた有機農業に加えて、2025年6月末に耕作放棄地の上に太陽光パネルを設置するソーラーシェアリングをスタートしました。パネルの隙間から地面に太陽光が届くので、電気と農作物を得られます。今はこれらを地域循環させることを目指しています。




発電量の実績は年間9.4万kWhで、売上は約140万円です。東京電力から電気を買った場合と比較して、39.6トンのCO2削減に貢献しています。発電した電気はイノシシ対策の電柵設置、電動草刈り機の充電に使っているほか、畑があってホームタウンの一つでもある城里町と協働し、2カ所の道の駅に売電しています。




農作物づくりは化学肥料生成時と輸送時のCO2削減に貢献できる有機農業を目指しています。有機農業は圃場の生物多様性が豊かになる上に、酵素の活性化によって地中への炭素固定量が増えるとされています。間接的に気候アクションの一つである上に、質の高い有機野菜を自分たちで作って提供できるようになると、選手たちのパフォーマンス向上につながるとも考えています。

作った農作物はホームゲームでファンサポーターやアウェーのお客さんに買っていただいています。また、茨城の野菜を詰めた野菜ボックスのサブスクサービスをスタートしていて、ゆくゆくは自分たちの畑でできた野菜をボックス化したいと思っています。



地方の抱える社会課題は共通しているので、私たちの水戸モデルが広がるといいと思って取り組んでいます。実際にわれわれがGXプロジェクトを発表してから、様々なクラブから問い合わせを受けています。また、取り組みに賛同し、スポンサーとして支援してくださる企業も増えてきました。Jリーグでは「未来の地球にいいパスを」という合言葉をうたっています。われわれもこの考えを大切にして、今後も取り組みを続けていきます。




ここからは講義中に集まった質問と回答の一部を掲載します

質問1野菜作りや栄養摂取の面で、ユースの子どもたちも関われるようなことを計画されていますか。
回答

子どもたちに栄養の講義を行っています。また、選手や子どもたちも畑に来てもらい、一緒に定植するような企画を考えています。すでに選手が畑に野菜の収穫に来るなど、選手が関わるのは、われわれのクラブでは当たり前の景色になっています。

質問2プレミアなどの先進的なリーグと比べて、Jリーグのクラブに不足していると感じていることや、クリアしていくために必要なことなどをお聞かせください。
回答
圧倒的に不足しているのは、各クラブのスタッフの環境問題に対する理解だと思います。Jリーグや各クラブの中で、もっと取り組みの必要性や価値観が育まれ、醸成されていく必要があると思います。
質問3これからSPLで採点されるとのことですが、自己採点で100点満点中どのぐらいとお考えですか。また、点数を上げていくためにどのような取り組みが必要と感じていますか。
回答
たぶん30~40点程度だと思います。点数を上げるにはSPLでカテゴライズされた12個項目の中で、自分たちができていること、できていないことを明確にする必要があると思います。来年再来年で点数を上げるためのものすごい改革ができるわけではありませんが、きちんと各項目に意識を向けることで、アクションプランを考える。そして少しずつ改善しつつ、しっかり発信することが大切だと思います。