【受講料】
各パート(全3回)1,500円(学生 1,000円)
【定   員】
250名
【時   間】
18:30〜20:15(受付開始 17:45)
【場   所】
損保ジャパン本社ビル2F大会議室講座開催場所地図

オープニング特別講座|参加費無料、定員250名(先着順)です

"洞爺湖サミット"を読む〜どうなる、気候変動次期枠組〜

全世界注目の洞爺湖サミット。
各界のパネリストが分かりやすくひも解きます。

【日   時】
5月31日(土)13:30〜16:30

座談会

岡島氏
岡島
何かお互いの意見について感想や質問などがあればお願いします。
浅岡
一番大事なことは、早くやらなければ余計に時費用がかかり、悪影響も大きくなってしまいまうということです。「これを実現するんだ」という目標を早く定め、知恵を集中する。長期的に大幅削減をしていくには、そうできる仕組みが必要です。キャップが嫌だという意見がありましたが、キャップなしでは価格をつけることになりませんし、減らさなければいけないということがまず先にあると考えるべきなのではないでしょうか。
桝本
こういった対応をする時に、誰を主体にしてやるのかが問題だと思います。政府がどのような規制や目標をつくろうが、実行するのは市民と企業です。それらの主体に対する思いやりや態度などがあらゆる面で必要ではないでしょうか。また、私から植田先生に質問ですが、環境ビジネスが必要であるという方向性は社会全体で共有できるのですが、実際にそれらの市場が形成され、雇用が増進するまでには大変厳しい情況が待っています。この点についてどう思われますか?
植田
日本の場合、再生可能エネルギーへの取り組みが大変弱い情況です。その部分でEUに差をつけられており、私達はできることを逃してきたという気が私はしています。それからもう一点、社会経済の仕組みを構造的に改革する、つまり今ある産業がどうなるということだけでなく、今ない産業がたくさんあるのです。私はそういう所を逃すなという点を申し上げたく、実際にエネルギー産業の中でも様々な新しい分野での投資が進められている事例が登場しており、私達には色々な可能性があるのに、それをやれていないということを問題にしたいのであります。
桝本
例えば、税の問題が一番象徴的ですが、環境対策に取り組んでいく時に、新しく歳出が必要だ…これは間違いないと思います。しかし、一般家庭で例えれば、子供が大学に入るので新しく支出が増えるという時に、どこかからお金を貰えるようになるわけではなく、お父さんが酒代やタバコ代を節約して自分達で家計をやりくりして歳出を賄います。同様に、環境税や炭素税を新たに導入するということであれば、予算全体を見直してその優先順位を考えてお金の配分をして頂きたい。産業界としては切実な問題なのです。
浅岡氏
浅岡
しかしこういった税は、すべてのものに平等にかかる消費税などとは違うものです。私達がエネルギーなどの資源の消費を節約すれば総支出を減らすこともできるわけです。省エネなどに取り組みながら、共に工夫し、対応策を考えるという道もあるのではないでしょうか。
岡島
事業者も国民もやる気があって、前進できていないのは政府だけだという話になってきましたが、本題の洞爺湖サミット向けて何を望むかということについてご意見を伺いたいと思います。
浜中
やはり効果を上げていくためには、途上国が積極的に参加できる枠組みをつくれるかということにかかっており、最も注目すべきポイントです。先月北京へ行ってきたのですが、そのことを強く感じました。しかし同時にこういった国々は、まだまだ多くの課題を抱えています。セクター別アプローチの有効性も期待されていますが、現実には途上国側に産業部門ごとの削減可能性を示すデータが乏しく、企業に行っても出してくれないといった問題があります。ですから、どうしたら効果的なデータを早く入手できるか、そしてそれを活用できる人材をいかに育成していくかということを早く検討し、取り組まないと、この制度を生かすタイミングを失ってしまうかもしれません。
ちょうど中国の話が出ましたが、私は3年間北京大学で「中国は持続可能な社会か(たぶんそうではないだろう)」という講座を持っていました。さらに、2009年9月に北京大学と早稲田大学で環境専門の共同大学院を開くことが決まりました。これが新たな人材育成の道となればと考えています。この大学院で、持続可能性がいかに困難なものであるかというテーマに真正面から取り組んでいきたいと思っています。
桝本
私は主要排出国が参加するということを、まずサミットのターゲットにして欲しいと思います。もうひとつは、日本の貢献が可能になるような枠組みを求めたいです。日本は産業別で細かく見ると二酸化炭素の排出を抑える技術を持っているのですから、これを世界に生かせるようにして頂きたい。最後に経済負担の面についてですが、発展途上国や気候変動の被害に直面している人々に対する緩和措置、これについて徹底して先進国が身を切るべきだと思いますので、これらのことを考えて貰いたいと思います。
浅岡
京都議定書は世界の温暖化対策の出発点であり、今後も機能する仕組みで、日本の環境外交の要となりうるものです。コペンハーゲンで新たな枠組みが追加されるにせよ、洞爺湖サミットは、私達は京都議定書を大事にしますというメッセージを日本から国際社会に発信しておく貴重な機会だと思います。
浜中
ドイツのある研究所の所長が「避けることができない課題には、それを放置して収拾がつかなくなる前にちゃんと立ち向かいましょう」と発言しています。これは、低炭素社会に向かう決意が必要だということであり、多くの人が想像力を発揮し、自分に何ができるのかを考えて参加することを実現するということです。そして、それを後押しする仕組みも必要だと考えています。
私はこれから早稲田環境塾を立ち上げて、まず何をすべきかを地域と具体的な課題から出発して考えていき、様々な方法で取り組んでいきたいと思います。
桝本
今回の洞爺湖サミットで、中国、インド、アメリカ…こうした排出量の多い国が共通の場で議論し、参加することが大切だということが、改めて確認される必要があると思います。アフリカ問題も大事ですが、それ以上にアジアの一員としてのメッセージを福田首相が発することを期待しています。
会場
岡島
最後に植田先生にまとめて頂きましょう。
植田
原先生から、日本の環境政策に原則や哲学がないというご指摘を頂きました。私もそう思う部分があるのですが、これを乗越えていくためには、まず一点目として、社会の仕組みを大きく刷新し、創造的なものに変えないと成功はしません。つまり創造力のある、自らを変える力のある社会でなければならないのです。二点目は、低炭素社会を実現するために、「見通し」、つまり長期的視野を持つことが求められています。また、同時に決断も迫られているのです。長い目で見ながら、今決断するということがとても重要です。さらに三点目として、温暖化防止は日本だけではできません。国際社会の中の日本ということをよく理解しなければならないのですが、日本はやや内向的になり、国内のことだけを考える傾向にあると感じています。国内の対策と国際社会の枠組みを考えることを、一緒にやらなければならないと考えます。その点で私は、原先生が取り組まれている北京大学との共同人材育成はとても意義があることだと思います。日・中で一緒に取り組み、共通の認識をつくっていくことが非常に重要なことです。
岡島
私達は決断をして、「やる時」に来ているということ、そのためには今までと同じことをやっているのでは追いつかず、全く新しい発想で取り組んでいく必要があります。私達はアジアでリーダーシップを発揮できるくらい軸足をしっかりさせなければならないということが今日の結論のようです。本日はどうもありがとうございました。