全体テーマわたしと地球のウェルビーイング

市民のための環境公開講座は、市民の皆さまと共にSDGsをはじめとする地球上の諸問題を理解し、それぞれの立場でサステナブルな未来に向けて具体的に行動することを目指します。複雑化・深刻化する地球環境の変化の中で、自然の美しさにふれ、こころのゆたかさを保ちながら環境問題に対し、未来志向で取り組んでいくヒントを探ります。

無料のオンライン講座として通常講座全9回および特別講座を開催します。

天気予報はどのように作られているか知っていますか。普段何気なく見ている天気予報をしっかり読み解くことで適切な防災行動につなげることができます。意外と知らない天気予報の豆知識や、近年の気象災害、防災気象情報の使い方についてわかりやすく楽しくお話ししたいと思います。

講座ダイジェスト


意外と知らない天気の知識

天気は地域の特性を大きく受けることをご存じでしょうか。例えば私の住む熊本県は西風が吹くと大雨で、東風だと晴れることがありますが、隣の大分県や宮崎県は全く逆です。このように隣県でも気象の特性が違うのです。ところで今年は2010年の統計比較が可能なときから、最も猛暑日のアメダス地点数が多くなりました。さて、ここで質問です。猛暑日とは最高気温何℃以上でしょうか。




正解は、「最高気温が35℃以上の日」です。また、最高気温が30℃以上の日を真夏日、最高気温が25℃以上の日を夏日と、5℃間隔で決められています。ちなみ朝や夜中の最低気温が25℃を下回らない日を熱帯夜と呼びます。冬は最低気温が0℃未満の日を冬日、最高気温が0℃未満の日を真冬日と呼びます。



次の質問です。天気予報などで「大雨のピークは未明~昼前にかけて」と使われる「未明」という言葉は時間に置き換えると3時~6時の間となる。〇×どちらでしょうか。



正解は×で未明は「0時~3時」です。「3時~6時は明け方」、「6時~9時は朝」、「9時~12時は昼前」、「12時~15時は昼過ぎ」、「15時~18時は夕方」、「18時~21時は夜のはじめ頃」、「21時~24時は夜遅く」を指します。このように気象庁は3時間ごとに分けています。こういうことを知っておくと、防災情報を正確に知り、間違わずに避難や準備を行えるようになります。



空の旅へレッツゴー!

それでは、次に、皆さんを空の旅にお連れします。飛行機に搭乗すると、上空でシートベルトサインが消える頃、下に雲が見えるようになります。飛行機から見られる現象の一つが「ブロッケン現象」です。写真では黒いところに飛行機が映り、まわりに虹のような輪がかかっています。太陽の高度が低い朝か夕方の時間帯、且つ影の映る雲があるとき、太陽と反対側の外側席に座ると見られます。



雲のじゅうたんからポコッと出ている積乱雲は下層から上層に向かうぶ厚い雲で、その下では雨が降っています。柱のように見えるのは「雨柱」です。黒い積乱雲になってくると、バケツをひっくり返したような雨が降り、災害を引き起こすことがあります。




雲の種類は大きく分けて、10種類に分けられ「10種雲形」と呼んでいます。また、下層雲、中層雲、上層雲に分けられます。



地球を覆う層は対流圏、成層圏、中間圏、熱圏に分かれていて、熱圏より上が宇宙です。雲ができる対流圏は、宇宙から見るとリンゴの皮ぐらいの薄さです。「対流」とは、上昇流や下降流などの縦の動きです。雲は上昇するとでき、下降すると消えます。そこを飛行機が通ると揺れます。飛行機は対流の影響を受けない「対流圏界面」のあたりを飛んでいます。



雲は対流圏界面よりも上には行けず、積乱雲の上部が横に広がります。これを「かなとこ雲」と呼び、その下は大雨になっています。また、夏の空で発達する積乱雲は局地的に雨を降らせます。それを「大気の状態が不安定」と言い、朝から雷注意報が出ている日が多いものです。雷注意報が出ていて午後から積乱雲が湧いてきたら「夕立があるかもしれない」と心構えをすることが大切です。



「黒い雲が近くにある」「雷がゴロゴロ聞こえてきた」といった兆候があるときは、気象庁のサイトで気象レーダーを見てください。画面の下の雷マークを押すと「雷ナウキャスト」が見られます。雷が鳴りやすいエリアになっていたら、外での活動を中止するサインです。



珍しい雲もご紹介します。「彩雲」は、太陽のすぐ近くに現れます。また、太陽が低高度にあり、巻層雲のような薄雲がかかっているときに「環天頂アーク」という逆さ虹ができることがあります。その他に「幻日」といわれる短い虹や、太陽のまわりに輪ができる「ハロ」が出ることもあります。



天気予報はどうやってつくられる?

各地に置かれている観測機「アメダス」などで気温、風、雨量を、気象衛星「ひまわり」などで雲の様子を、気象レーダーで雨などを観測し、それらをスーパーコンピューターで計算しています。それを見て気象台の予報官などが、天気予報に翻訳しているのです。


上空の風や気温は「高層気象観測(ラジオゾンデ)」という気球で観測しています。毎日2回、上げられています。




増えている洪水

令和2年7月の豪雨で、私の地元である八代市では球磨川が氾濫しました。このような大きな川の氾濫は「外水氾濫」と呼ばれています。



先月(8月)、八代市内では道が川のようになり、浸水の被害が発生しました。「内水氾濫」と呼ばれるもので、大雨によって排水できなくなった用水路や下水があふれ、町が浸水してしまうことです。この内水氾濫や外水氾濫は、「非常に激しい雨」と言われる、1時間に50~80㎜の雨が数時間降り続いたり、もっと激しい1時間に80mm以上の「猛烈な雨」が降ると発生します。




豪雨災害を引き起こす一つが「線状降水帯」です。8月10日~11日の気象レーダーでは、西から暖かく湿った空気が流れ込んで、九州の北側に梅雨前線ができ、前線の南側に線状降水帯が形成されていたことが分かります。ちなみに「非常に激しい雨」の発生回数は、40~50年前と比べると1.5倍増加していますが、温暖化が進むにつれて発生回数が増えると言われています。



大雨災害から命を守るには

まず、ハザードマップで「地域の災害リスクを知る」ことが大切です。内水氾濫、外水氾濫、土砂災害、高潮、津波などのハザードマップを確認してください。

災害から身を守る知識を持つことも大切です。大雨の2~5日ほど前に早期注意情報(警報級の可能性)が出ます。警戒レベル1に続いて、大雨が降り出す半日ほど前に出されるのが大雨注意報・洪水注意報で、警戒レベル2となります。大雨が降り洪水や土砂災害などの重大な災害が起きる可能性が高くなると大雨警報・洪水警報が発表されます。その情報に基づき各自治体から避難所開設され、警戒レベル3の高齢者等避難が発表されます。土砂災害や洪水の危険が高まると土砂災害警戒情報や氾濫危険情報が発表され、自治体から避難指示(警戒レベル4)が発表されます。災害がいつ発生してもおかしくない非常に危険な状態が警戒レベル5で、大雨特別警報が発表されます。「災害の時は警戒レベル3や4で避難。5は災害発生」を覚えておいてください。




いざという時に使える情報として、気象庁の「キキクル(土砂、浸水、洪水の危険度分布)」をご紹介します。気象レーダーの雨量データに基づいて、危険が迫っているところを黄色・赤・紫・黒で教えてくれます。実際の水位は、国土交通省が提供している「川の防災情報」「川の水位情報」で見られます。河川カメラでリアルタイムの川の状態を見ることもできます。



災害はいつ起こってもおかしくないものです。でも普段から備え、知識を持っていれば、命や財産を守れます。また、防災は家族や地域、所属する会社や団体などと一緒に対策することが大切です。一方で、温暖化によって気温が上がるにつれて、大雨の回数が増えていることがデータに表れています。そのために電気の使用量を減らす、二酸化炭素の排出量を減らすといった工夫も大切にしてほしいと思います。



【ご参考】気象庁ホームページ


ここからは講義中に集まった質問と回答の一部を掲載します

質問1外を歩いているときに怪しいと思うような雲や風の変化には、どのようなものがありますか?
回答
大雨の前兆となる現象があります。一つ目は黒い雲が近づいてくる。二つ目は雷の音が聞こえたり、雷光が見えたりする。三つ目はヒヤッとした風がいきなり吹いてくる。これらが大雨のサインです。
質問2竜巻や突風も予測できるのでしょうか?
回答
はい。竜巻は積乱雲の下で起きます。大雨が降っているときに「竜巻ナウキャスト」を見ると示される、竜巻発生確度を見てください。ちなみに竜巻は雨の時に起きますが、つむじ風は晴れている時、運動場などの広いところが熱射で暖められて、局地的に風と風がぶつかることで発生します。
質問3今後、早田さんが発信していきたいことなどをお聞かせください。
回答
みなさんの住んでいる地域の地形と気象を知っている気象予報士は、すごく大事な存在です。国もそのような人たちを交えて、適切な防災体制が取れるようにする動きを進めています。私たちも地方からそのような動きをしていきたいと思います。