受講料:各パート1,000円(学生500円)・定員:250名・時間:18時半から20時15分(18時受付開始)

パート3・くらしと環境

10月20日(火)

衣類のフットプリント

篠 健司氏
パタゴニア日本支社環境担当 コンサベーション・アライアンス・ジャパン理事

 パタゴニアは、ロッククライミング、スキー、スノーボード、サーフィン、ヨガなど、人間が機械の力に頼らないで楽しめるアウトドアスポーツのためのウェアを作っている企業です。なぜ私たちが、フットプリントを意識する会社になったかというと、クライミングの時に岩に打ち付ける「ピトン」という自社の登山道具が自然を破壊するということが、1970年代初めに認識したことがきっかけです。そこで、当時会社の売上げの半分以上を占めていたこの製品の製造から撤退することを決め、環境に配慮した登山のやり方を広めるという道を歩みはじめたのです。その後1980年代、フリースの販売などに支えられて急成長しましたが、一方で、それら衣料品製造による環境負荷を感じ始めていました。そこで、91年に素材の環境アセスメントをスタート。ポリエステル、ナイロン、コットンに対してフットプリントの測定を行いました。その結果、化学繊維・天然繊維いずれにおいても環境負荷をかけていることが判明しました。そのため、日常業務における指針として「環境に対する原則」を策定。これにより、世界初のペットボトル再生によるPCRフリース開発をはじめとする環境に配慮した様々な取組みが生まれ、それら一連の経験を通じて、このような環境重視の原則がビジネスにも大変有効であること、企業が消費者を啓蒙してよりよい社会を作っていけることなどをはじめとした数々の教訓を得ました。

 そんなパタゴニアの製品が、デザインから納品に至る工程でどのようにフットプリントを残しているかを現在19製品について公開しているのが、「フットプリント・クロニクル」というサイトです。これは、デザイン、原料調達、縫製・裁断、染色、プリント、配送という各ステージにおいて、エネルギー消費量、移動距離、二酸化炭素排出量、廃棄物発生量がどれくらいなのか、さらに3製品については、水をどれくらい消費しているのかという「ウォーター・フットプリント」も公開しているものです。

詳しくは、ぜひ当社のサイトにある「フットプリント・クロニクル」のページ(http://www.patagonia.com/web/jp/patagonia.go?slc=jp_JP&sct=JP&assetid=23438)をご覧下さい。企業とは、環境コストだけでなく、ソーシャルコストについても責任を負っている存在であり、社会、環境、製品、品質ということに関して更に掘り下げて、現在私たちは、より透明性ある情報を公開できるサイトを作り上げようとしているところであります。

 このような長年にわたる一連の取組みを通じて得られた、グリーンビジネス実践におけるポイントをまとめると以下の8点になります。 1.廃棄物の流れを考察する 2.使用原料を考察する 3.測定と記録を考察する 4.建物を考察する 5.サプライヤーおよび取引企業を考察する 6.健全な環境の保護、回復に取組む組織、グループ、非営利団体、個人を支援する 7.環境問題および環境に与える不必要な悪影響の削減に関し、ステークホルダー認識を高め、教育する 8.顧客や他企業に対し、自社の環境影響、問題点、成功事例について透明性を保つ

 一方、消費者としての私たちが出来ることは何か…3つのポイントにまとめました。 1.自分が愛用しているアパレルブランドやメーカーに環境や社会にどのような配慮をしているかを聞いてみる 2.フットプリントを算出して公開するリクエストをする 3.環境に配慮して作られた製品を選んで長く愛用し、着られなくなった時にはリサイクルに出す 或いはその前に修理してみる

実は、衣類の一生における環境負荷を分析した時、その全体を100とすると、消費者の手に渡ってからのステージで65もの負荷があることが分かっています。洗濯、漂白、柔軟、乾燥など手入れの部分に占める割合がより大きく、こういったこと全てが衣類のフットプリントに繋がってくることも、併せてご理解頂ければと思います。

構成・文:宮崎伸勝/写真:黒須一彦エコロジーオンライン