【受講料】
各パート(全3回)1,500円(学生 1,000円)
【定   員】
250名
【時   間】
18:30〜20:15(受付開始 17:45)
【場   所】
損保ジャパン本社ビル2F大会議室講座開催場所地図

パート1学ぼう 温暖化・日本の役割7月1・15・22日(火)

7月15日

地球環境問題と途上国援助

荒木 光弥氏  国際開発ジャーナル社 主幹

先日の洞爺湖サミットで発表された首脳宣言は、「2050年までに世界のCO2を50%削減するという目標をビジョンとして掲げて検討し採択することを求める」というものでした。これは途上国側にとって受け入れられるものではありませんでした。しかし我々人類は、今すぐにでも国際的な合意をとりつけて、この問題に取組んでいかなければ、私達の子や孫の世代がこの被害を負わされるのだという危機感と使命感を持つべきだということが、温暖化問題の基本的な考え方だと思います。
また、世界人口の20%を占める先進工業国は世界の富の80%を占めているのに対して、世界人口の80%を占める開発途上国は世界の富の20%を占めるに過ぎないという地球的ジレンマが、現在の地球環境問題の前提に横たわっていると私は考えています。

リオデジャネイロで地球サミットが行われた1992年は「環境元年」と呼ばれており、同じ頃、「Global Issue」という言葉も誕生しました。日本語で言い換えれば、「地球規模の問題」「地球全体で考えていくべき問題」という意味です。それまで経済格差などの理由から「南北問題」と名付けられ、先進国とは一線を画してきた南側の発展途上諸国とも協力し合って、「南北一緒」に問題解決に取組もうという視点が生まれたのです。しかし途上国側から見れば、大気汚染や酸性雨といった環境問題は先進国が豊かになって行くプロセスで生み出されたしわ寄せであって、その富の代償なのだから、先進国が率先して環境問題に取組まなければならないと主張し続けています。「北側はこれまでの開発による富のストックの余裕から、私達に対して気楽に開発を抑制するようなことを言うけれども、我々はまだ黒い煙が欲しいのだ」と言っているのです。この言葉から、「地球環境問題における南北問題」の深刻さが分かるのではないでしょうか。従って、「途上国援助」は単にODAによるものだけでなく、NGOの支援や民間企業のCSRなども含めた総括的な援助が宿命的に避けて通れないことだと思われます。因みに、地球上の全人類が1992年のアメリカの生活レベルになると、養える人口はわずか16億人、日本の生活レベルでも23億人に満たないと言われています。今後見込まれる人口増加を含めて考えても、人口問題と環境問題は常にオーバーラップして進行していることを忘れないでいただきたいと思います。

我が国は、環境問題を初めてテーマに据えた1989年のアルシュ・サミットにおいて「89〜91年の3年間で環境ODAを3000億円に拡充する」と打ち出し、実際には4000億円以上のODA実績を達成しました。92年の地球サミットでは「92年から5年間で環境ODAを9000億円から1兆円を目途に拡充」することを打ち出し、その後もODAの実績を積上げてきました。具体的なODA実施分野は、給水・上水道、下水処理、廃棄物処理、植林、治山治水、脱硫事業、そして環境管理能力向上のための技術協力などが挙げられますが、日本の場合、各省庁がバラバラにこれらを実施するために、ODAに対するトータルのイメージが湧きにくいことが問題点ではないでしょうか。今後ODAをもっと上手に使うことが必要で、途上国が気候変動枠組に参加するためのインセンティブとなるような方法を考え、途上国の持続可能な開発の達成と温暖化対策実施能力の向上の両方を実現できるようなODAの取組みが求められるのではないでしょうか。

構成・文:宮崎伸勝/写真:黒須一彦(エコロジーオンライン