市民のための環境公開講座 15周年記念シンポジウム「私は言いたい!地球の未来を語ろう」ダイジェスト

1・主催者挨拶 | 2・祝辞 | 3・基調講演 | 4・リレートーク | 5・閉会挨拶



株式会社損害保険ジャパン 取締役社長
財団法人SOMPO環境財団 理事長  佐藤正敏


この「市民のための環境公開講座」は、1993年にスタートし今年で15周年を迎えることになりました。これまで257回の講座を実施し、1人でも多くの市民の方々に環境問題についてご認識頂き、それぞれのお立場で解決に向けて行動して頂けるように機会を提供して参りました。今日、私達が異常気象を肌感覚で感じられる時代がやって来ています。

2007年に公表された気候変動に関する政府間パネルの第4次評価報告書でも、近年の気候変動の原因が人類による温室効果ガスの排出であることがほぼ確実であると明言されています。我々損害保険業界は、こうした気候変動に伴って年々増加している台風や集中豪雨などに最も影響を受けている業界の1つであります。災害の際には充分な支払い能力を確保して、被害に遭ったお客様に迅速に保険金をお支払いすることが 使命ですけれども、一方で防災に関する最新情報のご提供、そしてこうした災害の元になっている温暖化を抑制していくにはどうしたらいいかを考え、会社として積極的に取り組んでいく事もまた役割であると認識しています。そこで損害保険ジャパンは1992年に国内金融機関として初めて環境専門の部署を創設し、環境問題への取り組みをして参りました。地球環境問題解決の為には、政府、行政、企業、市民といった社会のあらゆる分野の人々が課題を共有して取り組む事が不可欠です。ただ実際に行動するのは1人1人の個人が元になります。このシンポジウムが、その解決に向けてご参加の皆様の認識を深めて頂き、行動に結びつく機会になればと願っております。

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環境省大臣官房長 小林光氏


この度、社団法人日本環境教育フォーラム、株式会社損害保険ジャパン、財団法人SOMPO環境財団の皆様のご尽力によりまして、「市民のための環境公開講座」が15周年の大きな節目を迎えられました。これを記念したシンポジウムがここに開催されます事を心よりお祝い申し上げます。

1992年、地球サミットにおいて人類共通の課題である地球環境の保全・持続可能な開発の方策が話し合われました。その翌年1993年にこの「市民のための環境公開講座」が環境問題について幅広い市民の方々と一緒に学ぶことを目的としてスタートされ、NPOと企業の協働による社会貢献事業の先駆けとなりました。この講座には、これまで私達を含めて環境省の関係者が多数、講師としてあるいは参加者としてお世話になって参りました。この席を借りまして厚く御礼を申し上げます。環境省としましても、この取り組みを引き続き応援していくとともに、これまで以上にNPOなど民間団体や企業、そして市民の皆様方と手を携えて連携・協力をしながら、環境保全活動の推進、普及啓発に務めて参りたいと考えております。

こうした意義深い活動を長年にわたって続けてこられました日本環境教育フォーラム、損害保険ジャパン、SOMPO環境財団の関係の皆様方に深く敬意を表しまして、また本日シンポジウムに参加されました皆々様方にとって、この機会が実りの多いものになりますよう祈念しまして、お祝いの言葉とさせていただきます。

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東京大学総長  小宮山宏氏


テーマ 「課題先進国」日本 〜環境とエネルギーの視点から〜

『課題先進国・日本』という意味は、日本はとても多くの困難な課題を抱えているけれども、その答えを欧米諸国に求めても無い、なぜなら日本は先進的にそういう課題を抱えているからである、ということです。資源が少ない、廃棄物が多い、環境汚染が著しい、少子化・高齢化…非常に多くの課題がメディアを賑わして私達は暗くなりがちですが、よく考えてみると、こうした課題は経済成長著しい中国・インドなどを見れば明らかなように、あと20〜30年経てば世界中の国で現れてくる可能性があるのです。つまり、資源がない、環境が大変だ、少子化だ、都市の過密・地方の過疎だ…といった事は、間もなくやって来る世界共通の課題であり、日本は先進的にこういう課題が顕在化しているわけですから、他の国にモデルを探そうと思っても見つかることはありません。

歴史を紐解けば、イギリスが議会主義を作ったり、フランスがフランス革命を経てデモクラシーを作ったり、アメリカが自動車社会を作ったりしたことは、別に他国のためにやったことではありません。ただそれが人類として合理性があったから、やがて世界に広がっていったわけです。こういった姿勢が、その国の国際競争力にも、世界史的権威にも繋がるのです。その理由を、これから順を追ってご説明しましょう。

世界各国の国内総生産と二酸化炭素排出量のシェアを2004年のデータで比較してみると、日本は世界第2位の11.1%という生産シェアでありながら、二酸化炭素排出シェアについては僅か4.7%と、非常にエネルギー効率の良い生産をしていることがわかります。一方中国は、4.6%の生産に対して、17.4%と世界で2番目に多くの二酸化炭素を排出しています。また日本は、特にエアコンや自動車などで良く知られていることですが、作っている製品のエネルギー効率も高い国です。

欧米車と日本車の燃料消費を比較すると、明らかに日本車の消費量の方が20%少なく、ハイブリッド車なら更に半分になります。これが「技術の差」です。個人的な話ですが、私が2006年3月まで乗っていた車の燃費は平均7km/リットルでしたが、ハイブリッド車に乗換えたら21.4km/リットル。つまり私のガソリン消費量は1/3に減った訳ですから、世界中の人々が私と同じことをすれば世界のガソリン消費量は1/3になるという計算が成り立ちます。これが「技術に対する期待」です。このように、技術の力によって同じサービスを受けながらもエネルギー消費量を減らす事ができる、ここが日本が主導すべきポイントであり、技術を正しく理解するということが環境問題を考える上で極めて重要なことなのです。

では、なぜ日本はこれだけのことをやってこられたのでしょうか?企業のモラルでしょうか?私は違うと思います。「課題があったから日本はやったのである」と私は言いたいのです。私が子供の頃の教科書には、工場からモクモク出ている煙は社会の発展の証だと書いてありました。しかし人口密度が高い日本は、そんな工場のすぐ近くに人々が住んでいたために公害問題が全国で発生しました。広い国であれば、そんなに急に影響は受けなかったかもしれません。北九州、四日市、神通川、水俣湾…日本全国に同様の例がたくさんありますが、それらを解決してきた素晴らしい歴史を日本は持っているのです。

それなのに、なぜ私達日本人は明るい気持ちになれないのでしょうか?私は、明治以来日本人には「真似をする」という癖がついてしまったからだと考えています。鎖国をしていた江戸時代には、茶の湯、浮世絵、花火など世界に強烈な影響を与えた文化がたくさん花開いたのが、この日本という国です。なぜ私達はミシュランに美味しい寿司のランクを決めて貰わなければいけないのでしょうか。これと同じ問題なのです。「自分達で価値を決めていく」…これが勝負のポイントなのです。今の日本が抱える課題は20〜30年先の地球の未来像であり、解決のモデルを作り上げればそれが世界に導入される、つまり21世紀のモデルに最も近いのが日本だと言えるのです。ハンバーガーショップで紙を5枚10枚と使って食べ散らかすカルチャーよりは、日本のきめ細かい「もったいない」というカルチャーの方が遥かに21世紀のモデルであることは疑いないことではないでしょうか。

私は高校生のための特別講座を持っているのですが、そこで彼らからの質問を受ける時、その前提が全て暗い事を大変危惧しています。「日本は公害を発生した悪い国ですよね」「日本はエネルギーをたくさん使っている悪い国ですよね」「日本は自然エネルギーを入れていかない悪い国ですよね」…どうして若い高校生がこんな質問をしてしまうのでしょうか。そこに大人の想いが映っているのではないでしょうか。若者は社会全体で教育をするものです。ですから、大人がこの日本を悪いと思っているのだとしたら駄目だと思います。環境やエネルギーといった問題で日本が先頭を切っているということを、我々がよく認識することが大切なのではないでしょうか。

そのような背景から私は、物質とエネルギーに関する環境と資源とを両立させるための提案・「ビジョン2050」を発表しました。これは簡単に言うと、エネルギー利用に関するシナリオを計算・構築していった場合に、あるエネルギー効率の目標値を掲げてそれを目指していけば、大体2050年位が人類の岐路になるというものです。結論から申し上げれば「物質循環システムの構築」「エネルギー効率3倍」「自然エネルギー2倍」の実現です。

いま日本では、物を作るのに使われるエネルギーと日々の暮らしで使われるエネルギーが大体半分ずつになっています。そして増加しているのは日々の暮らしで使われるエネルギーの方なのです。こういった状況の中で私達はどう行動すればいいのでしょうか。例えば、日本の住宅の平均回転率は30数年と言われていますから、2050年までに今ある住宅は殆ど入れ替わります。自動車ならば3〜4世代替わります。その時までにどういうライフスタイルの構造を作っておくのかをキチンと考えるべきだと思います。私達には、こういった長期の視点を持つ事がとても重要なのです。大きく見れば日本国内の自動車の台数はもう増えない所まで来ています。ということは、燃費が良くなる分だけ日本におけるガソリンの消費量が減っていくことになります。事実、すでに2006年に日本のガソリン消費量は世界に先駆けて減り始めました。この状況で、あなたにはどういう選択ができるでしょうか。

5年前に私は家を建て替える機会に恵まれたのですが、その時に「小宮山エコハウス」と名付けた実験をしました。エコキュートというヒートポンプを入れ夜間電力でお湯を作り、その他にも太陽電池、高断熱などの工夫を施した結果、我が家のエネルギー自給率は60%に、そしてオール電化でありながら1年間の電気代は5万円になりました。現在一般的な一軒家でガス代と電気代を足すと年間約30万円かかりますので、かなりの省エネ化を達成する事が出来たと言えます。

私は、日本が環境やエネルギーの分野で極めていい位置を走っている事を、大人がもっと認識すべきだと思います。そしてそんな我々がアジアに位置するということは、極めて有利な条件でもあるのです。日本人のために開発したモデルというのはアジアに入りやすいのです。日本が、今最も成長しているアジアの隣に位置する最先進国だということを、良好な事とするのか不幸な事とするのかが問われているのです。ここが大人の知恵の使い所と言えるのではないでしょうか。

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衆議院議員 元環境大臣  小池百合子氏
(当日はビデオ出演)


本日は、急遽バーレーンに出張しなければならなくなり、ビデオでの出演とさせて頂きます。

私が今回行くバーレーンをはじめとした湾岸の産油国は今大きな変化を遂げており、行く度に地図が使えなくなるほどです。その背景にあるのは原油価格の高騰であり、日本でもその影響が様々な方面に出ています。

かつて1970年代に石油ショックが起こった時、石油をほとんど持たない我が国にとっては文字通りのショックとなった出来事でしたが、それがある意味では省エネ技術を大幅に進化させ、イノベーションが起こり、その結果として現在のハイブリッド自動車や太陽光発電、代替エネルギー技術が大変進歩しました。

2008年の洞爺湖サミットでは日本が議長国を務めるわけですが、主要課題として、地球温暖化対策、アフリカ対策、そして石油価格高騰が世界にどういう影響を与えるのかなどが掲げられています。そもそもフランスのランブイエで開かれた第1回のサミットは、1973年の第4次中東戦争によって発生した第1次オイルショックを踏まえて、世界の経済をどうするのかについて先進国が集まったものでした。そして現在では、化石燃料の排出から生まれた問題を取り上げているということで、私はサミットの大きな底流は何も変わっていないと思います。議長国である日本は、何らかの形でこのサミットで生まれる流れをまとめて、その大きな流れが世界で動くようにしなければなりません。特にこれまで産油国は、あまりに押さえつけられるとその分自分達のビジネスチャンスが減ってしまうので、そこを補填する手当を要求してきたものでしたが、最近のOPECでは代替エネルギーへの乗換えを恐れてか、むしろ地球温暖化対策をやっていこうという姿勢に変わってきています。そういった国際情勢の変化の中で、中国・インドなど、今後ますますCO2の排出を急増させるであろう国々をどうやって引き入れるかを考えていかなければなりません。

私は日本にとって今やるべきことは1つだと思います。京都議定書の「6%下げる」という約束は世界に対して行っているものであります。残念ながら増えている、その分減らさなくてはならないという中で、「いゃあ、もうダメだ」という悲鳴が聞こえます。でも、そうでしょうか。70年代のあの二度にわたる石油ショックでどんなに日本がイノベーションを遂げたのか、そして私達の環境意識がその当時大きく変わった事を、もう一度思い出して下さい。

日本の世界における責任として、国民の皆さん一人一人にも、その協力者として、いや当事者として関わって頂いて、6%の削減という事を一人一人のご家庭で進めて頂きたい。これが私からのメッセージです。

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日本経団連自然保護協議会 会長
積水化学工業株式会社 代表取締役社長  大久保尚武氏


今日は、日本経団連の中の自然保護協議会の会長、そして積水化学という住宅やプラスチック製品のメーカーの社長という2つの立場から、企業が環境問題にどう取り組んでいくのかをお話し申し上げたいと思います。

そこでまず個別企業の環境経営の実例として、積水化学の事例をお話ししましょう。私が入社した1962年当時は、産業が出す公害が大きな社会的問題だった時代でした。当社でも製品に色をつけるのに様々な顔料を使っていましたし、工場からの廃棄物も多数ありました。環境問題の取り組みとしては、まずそういう事をやめようということから始まりました。その後、ゴミやエネルギーの削減といった社内での環境改善への取り組みがスタートしました。更に現在の主体は、製品そのものでの環境貢献へと進化してきています。また昔からやっている事ですが、出た利益の中から、一定の金額を使っていく社会貢献活動もやっております。

その中から「製品そのものでの環境貢献」の実例としてご紹介したいのが、「光熱費ゼロ住宅」です。生活の場から徹底してムダになっているエネルギーを減らしていこうという研究に10年近く取り組んだ結果、出来上がったものです。今の東京で一般的な家族構成の住宅に住んだ場合、年間約22万円の光熱費がかかると言われますが、私どもの住宅では、光熱費は条件により多少違いますがほぼゼロになります。そしてこの完全にゼロになる住宅が、私どもがお建ていただいたお客様の20%ほどになりました。またそこまで行かないまでも、太陽光エネルギーを使っているお客様は5割を越えています。

またもう1つの実例が、全国で敷設されている下水道管の更生事業です。先進国ではどこでもそうですが、50年位たつと下水道管の内部がボロボロになって劣化し、しばしば陥没事故が起きています。東京では2006年1年間で約900回起きています。しかしこれを掘り返して修復するとなると大量のゴミが出ますし、交通への影響を考えても掘り返すのは現実には難しい事です。そこで、ロボットが従来のパイプの内側に新たなパイプを作るという技術を10年がかりで完成させました。この工法では下水を流しながらでも作業が可能となり、現在日本はもちろん先進国各国で使われております。

一方産業界としての取り組みとして、日本経団連の自然保護活動について簡単にご説明します。現在の環境保護活動はNPO・NGOの力抜きには考えられません。それらと行政と企業が一体となって環境保護活動にどう取り組んでいくかということが、日本経団連自然保護協議会の考え方のベースです。この考えの下で色々なプロジェクトを支援している訳ですが、特に森林保護や植林、生物多様性の保護などを中心に協力をしています。それらを通して、開発と自然保護の関係、貧困と環境の問題、或いは次世代の子供達をどう環境教育していくかということについて、経団連の仕事として大事に取り組んでいるところです。

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NHK気象キャスター  半井小絵氏


気象衛星ひまわりは、高度36000kmの上空から地球を見ています。いつものテレビの天気予報では日本の部分だけを切り取った画像をお見せしているのですが、実際には地球全体が映った画像になっています。その丸い地球を見ていると、1972年にスウェーデン・ストックホルムで開催された国連人間環境会議でのキャッチフレーズ「ONLY ONE EARTH=かけがえのない地球」という言葉を思い出します。

ここ100年で世界の気温は0.7度上昇しました。僅かな上昇のように思われますが、人間の体温で考えてみると36.5度の人が37.2度の微熱を出しているような状態です。これが北極の氷やヒマラヤの氷河の融解などをはじめとして、各方面に大きな影響を与えているのです。

そんな中で、海に沈んでしまうかもしれないと言われている国がツバルです。海抜が平均1m50cm、人口1万人足らずのこの国は、サンゴ礁でできた9つの島からできていて、この9つを合わせても東京都品川区と同じ位の面積という小さな国です。自然環境は豊かで、人々はCO2をあまり出さない生活をしていますけれども、12月〜4月頃の時期は、満潮時にはサンゴ礁でできている地面から水が湧き出してしまいます。そして高波によって手作りの堤防は簡単に削られ、倒れた椰子の樹などで海中の生物を傷つけてしまうこともあります。そのような状況にあるこの小さな島は、あと数十年で消えてしまうかもしれないという危機に追いやられています。ツバルの子供達に島の絵を描いて貰うと、水の中に沈んでしまう絵を描くそうですが、学校では将来の移住に備えて、この子供達に母国語に加えて英語の教育をしています。しかし移住への道も決して簡単なものではなく、近隣の大国であるオーストラリアは現在これを許可していません。一方ニュージーランドでは受け入れを認めていますが、その条件として、(1)英語が話せること (2)移住してすぐに職があること (3)国の負担にならないこと …これらが求められています。

この地球温暖化の問題は、私達にとって対岸の火事ではありません。これによって気候が以前とは変わってきていますが、例えば紅葉は50年前に比べると2週間遅くなりました。よりシビアな例としては、2006年11月7日に北海道佐呂間町で発生した竜巻被害が記憶に新しいのではないでしょうか。F3クラスという日本国内では最大級の竜巻が発生し、9名の方が犠牲になりました。また日本は台風の影響を強く受けますが、2005年の台風14号は宮崎市を直撃し、市内に大きな被害を与えました。このように深刻な現象が次々と現れるようになっています。普段からCO2を出さない生活を心掛けることが、今後より重要になってくるのではないでしょうか。

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漫画家  赤星たみこ氏


先程の基調講演で小宮山先生がされていた家の話が大変面白く、私が主張していることと全く同じだったので、まずその話からさせて頂きたいと思います。

我が家では2004年に300kWのソーラーパネルを設置しました。これが毎月15000円のローンの支払いになります。そして電気代はというと、うちは住居と仕事場が一緒になっているために、夫や私のアシスタントを含めた誰かが24時間電気を使っており、また漫画を描くための紙の湿度管理などもあって、特に真夏には4万〜5万円弱かかっていました。ところがソーラーパネルを入れてからは、夏場でも1万円近くにまで下がりました。更に余った電気は電力会社に売電ができ、例えば夏の時期はこれが5000円程度で販売できます。毎月の電気代が1万円以下という家庭では設置費用の回収は難しいかもしれませんが、家族が多かったり、仕事場が一緒になっていて電気代が1万円以上かかる家であれば、私は日本全国、積雪の多い地域以外、全てソーラーパネルを入れてもいいのではないかと思っています。

私の夫は北海道旭川の出身なのですが、旭川の家は全ての窓が二重もしくは三重になっていて、断熱がとてもしっかりしています。夫がそういう環境で育ったために、「窓を二重にしたい・断熱材を厚くしたい」ということを住宅メーカーの営業マンにリクエストした所、「関東の寒さでは必要ない」と言われました。結局そのまま建ててしまったのですが、やっぱり窓は結露するし部屋は寒かったので、手作りマインドの高い夫は塩ビ板を利用した二重窓を手作りしました。そうしたら結露はしない、部屋は暖かいので、仕事場と寝室の窓に手作り二重窓を入れました。仕事場では、窓のそばの机に座っているアシスタントさんが「温かい!」と感激。寝室でも窓からの冷気がシャットアウトされて快適です。

さらに、数年前に家をリフォームした時には、リビングに障子を入れたのですが、障子紙1枚でも大変な断熱効果があり、冬は灯油を買う量が半減しました。私は北国でなくても二重窓をお薦めします。最近はペアガラスやペアサッシなどもありますが、ガラスが二重になっていても、その周りの熱伝導率が高いアルミ部分から熱を奪われます。窓全体を覆うようなもので断熱するにはカーテンもありますが、それよりも障子のほうが機密性も高く、お薦めです。「洋室に障子」は違和感があるかもしれませんが、これが意外にもモダンな雰囲気になります。ジャポニズム、アジアンテイストと言ってもいいでしょう。デザイン的にも世界に誇るべきオシャレなアイテムだと思いますので、ぜひ障子を入れ、熱効率を上げてCO2削減に取り組んでみて下さい。

私も、省エネのため熱効率を上げるため、これからも色々な工夫をしていくつもりです。

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京都大学大学院経済学研究科・地球環境学堂 教授  植田和弘氏


今回15周年ということなので、「環境と経済」がどう理解されてきたのか…その15年間の変化についてお話ししたいと思います。

私の想いとしては、本来「経済」は人々の暮らしを良くするためのものであり、経済が発展することはいいことばかりのはずなのですが、なぜか環境と経済は対立するものと言われてきました。その後やがて、「環境と経済の調和」だったり「環境権」という議論が登場するようになり、更に「環境と経済の両立」或いは「環境と経済の好循環」という考え方も語られるようになったのです。私は、これは大きな変化だと思います。しかしそんな現在でも、「環境と経済のトレードオフ」という考え方が、人々の意識の中にも、企業のマインドの中にも、依然根強く残っていると感じています。「トレードオフ」とは、「こちらを立てたら、あちらは立たない」という議論です。環境のことを考えていくと経済は縮小しないといけないのではないか、経済を発展させると環境はやはり悪くなるのではないか…ということです。

そんなこの15年間における大きな変化は、このトレードオフに挑戦する議論がたくさん出てきたことです。ヨーロッパでは「切り離し戦略」という用語があります。これは、「経済成長率が高くなる」ということと「環境負荷が増える」ということを切り離すという考え方です。言い換えるなら、「成長率は上がっているけれども負荷は減っているということが、あってもいいのではないか」ということで、それを戦略的に実現しようという考え方です。その1つとして「Factor 4, Factor 10」という提唱がありました。「豊かさを倍にし、環境負荷を半分にすると、全体としては4倍良くなる」というものです。私はその提唱者である、ワイツゼッカー博士とも直接お会いしたことがありますが、その時大変印象的な話を聞く事ができました。「世界中に失業者がたくさんいるのに、なぜ人件費を節約するような技術開発をするのか。もっと人を雇用し、環境を悪くしない、そんな技術開発の方向性こそ望ましい。」というものです。

また1983年に『環境破壊なき雇用』という著書を発表したヴィンス・バンガーというドイツ人経済学者がいます。普通の経済学者は、雇用を拡大するには産業発展を追究しなければならないので環境が悪化するという、いわゆる「環境と雇用はトレードオフ」として捉えるのですが、彼は「両方が大事なのだから、両方を実現できる道を考えるのが経済学者の役割だ」と考え、「環境税制改革」を提唱しました。「エネルギーに課税することでエネルギーを節約すると同時に、得られた税収で社会保険料を軽減し雇用を増やす」というものです。またハーバード大学のマーケティングの教授であるポーターは、「環境政策は、より環境に優しい技術を作らせる刺激剤である」と考えました。排ガス規制をクリアした日本の自動車業界がいい例ですが、「良くなった技術は競争力にとってむしろプラスである」というものです。このように、先に申し上げた「切り離し戦略」の具体的内容が15年間でいくつか提示されているという事は画期的な意味を持っているのではないでしょうか。それらと連動して、1987年に「持続可能な発展」が提唱されたのです。

今日小宮山先生が仰ったように、課題は解決するためにあるものです。ならばもっと戦略的に取り組んだらいいのだと私は思います。私達は環境問題への対応をイヤイヤやっているのではない。やらないといけないのではなくて、新しい仕事だと思って創造性をもって取組んだらいいのではないでしょうか。

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社団法人日本環境教育フォーラム 会長  北野日出男氏


本日は本講座の15周年記念を祝って、こんなに多数の皆様がご参加下さったことを厚く御礼申し上げます。また、ご講演いただいた講師の皆様にも厚く御礼申し上げます。

ところで、このシンポジウムは「私は言いたい!」というテーマですので、私もちょっとこの場を借りて言いたい事を申し上げたいと思います。

まずこの市民講座を立ち上げて下さった、当時の安田火災海上保険の後藤康男会長、そして地球環境室を立ち上げた北村必勝さん…お2人とも故人ではありますが、改めてここで感謝を申し上げ、またそれと同時に、お2人の意志を継いで今後もこの市民講座を続けていくということをお約束したいと思います。

そしてもう1つは、今日12月8日という日についてです。実は今日、小宮山先生の話の中で出て来た「課題先進国のマインド」という所で、「自分の問題に自分で答を出す」という項目がありました。それと連動して私の頭の中には、1941年12月8日の大東亜戦争の始まりが頭に浮かびました。当時私は小学3年生だったので、何が起こったのかもよく分からない世代でした。終戦の時は中学1年生。東京大空襲で全てを失いました。戦争中の日本人は、この「自分の問題に自分で答を出す」つまり「自ら学ぶ力」が全くなってなかったと思います。トップダウン式で覚えさせられ、信じさせられていました。正に教育の恐ろしさとでも言いましょうか、日本人はあの時代の教育に完全に洗脳させられていました。「鬼畜米英」を「竹槍で殺せる」と思っていた訳です。そんな教育の恐ろしさをこの言葉で思い出しまして、1941年12月8日を忘れて貰っては困ると改めて認識しました。

この講座に参加している皆さんは、自ら問題を見つけて、自らの力で学ぼう、自らの学ぶ力を養っていこうという想いで参加して下さっていると思います。ぜひとも皆様のご支援を頂きながら、そんなこの講座をみんなで育て上げていけたらと思っています。

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構成・文:宮崎伸勝/写真:黒須一彦(エコロジーオンライン)