パート1・自然科学系温暖化論
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第2回 ・

地産地消・旬産旬消ーフードマイレージからグッヅマイレージへー

2007年10月02日


篠原 孝 氏 【衆議院議員・農学博士】


「地産地消」という言葉は随分知れ渡ってきましたが、「旬産旬消」はちょっと遅れているようです。これら2つの言葉、そして今回のサブタイトルに掲げている「フードマイレージ、グッヅマイレージ」も含めて全て私が使い始めた言葉でして、ぜひセットで覚えて頂きたいと思います。環境問題は色々な切り口がありますけれども、食べ物を通じて考えると非常に分かりやすいので、今回はこの点から切り込んでお話をしたいと思います。

近い将来、世界は工的非循環社会が終焉を迎えます。因みに、工的非循環社会の逆に当たるのが農的循環社会です。「循環型社会」ではなく「循環社会」、「農的」とは「農業で生きろ」ということではなく「リサイクル的」と言い換えられるものですので、その辺から意味を理解して頂くとよろしいかと思います。この200〜300年間は鉱物資源産業時代でしたが、生物資源産業時代にならざるをえません。

「生産」とは何を意味するものだったでしょうか。例えば、いま私の目の前にはマイクや時計などがありますが、これらは物理化学的には鉱物資源から人間に都合のいいものに、「形を変えている」だけなのです。同様に机は木材加工品でしかありません。では本当に「作る」、つまり無から有を生み出しているものは光合成により太陽エネルギーから生産しているのは植物しかありません。だから農業は永久産業と言われるのです。戦後団塊世代の私は、かつて教科書で「鉱物資源に恵まれない日本は加工貿易立国として生きるしか道はない」と教わりました。しかしこれは工的非循環社会の発想であり、むしろ我が国は、雨が多く降り生物資源に恵まれた「資源大国」であるのかもしれないのです。日本人は鉱物資源や石油ばかりが資源だと思っていますが、緑こそ貴重な資源であることを忘れてはいけません。

その発想から各々の食文化のローカリゼーションに目を向ける動きが既に広がっています。それが「食の世界の反グローバリズム」です。例えば、その土地の伝統的な料理を大切にしようという「スローフード」の考え方がイタリアで生まれ世界に広がりました。また韓国には、「身土不二」という言葉があります。地産地消と同じです。そして更に、食のグローバリゼーションの問題でしばしば攻撃されるマクドナルドには、実は「現地の農業に貢献せよ」…つまり、現地の農産物を使えという社是があり、フランスのマクドナルドなどはそれに従った経営をしています。なるべく現地国の原材料を使い、その国の産業に貢献することが求められています。この問題は外食産業に限られたものではなく、我が国の他の業界に目を向けても、日本人はカネで動く民族であるという印象を強く受け、自国内の資源や文化に対する意識が低いと感じざるを得ません。

そうしたこの国で、「地産地消・旬産旬消」という言葉を1987年から、「フードマイレージ」を2000年から私は提唱しています。英語では、地産地消を「Produce Locally Consume Locally」、旬産旬消を「Produce Seasonally Consume Seasonally」と訳しますが、食べ物はその時その場所でできたものを食べる…大袈裟なことではなく、ちょっと前までは私達日本人にとっても当たり前だった事です。なるべく輸送を少なくして環境にやさしい生き方をすることが、外国人にもすんなり受け入れられます。このことを我々はもう一度思い出す必要があるのではないでしょうか。

構成・文:宮崎伸勝/写真:黒須一彦(エコロジーオンライン)


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