高知県馬路村・損保ジャパン「協働の森づくり」記念「市民のための環境公開講座」
シンポジウム「森と地域のつながり」
〜21世紀の幸せを考える〜

高知県・馬路村・損保ジャパンでは、「協働の森づくり事業」においてパートナーズ協定を結ぶのを記念し、損保ジャパンが日本環境教育フォーラムと協働で1993年より開催している「市民のための環境公開講座」をシンポジウム形式で開催します。きちんと手入れをして森が豊かになると、地元も元気になる、そんな「森と地域のつながり」について一緒に考えましょう。

日時:2007年2月17日(土)午後1時半〜4時半
場所:こうち男女共同参画センター・ソーレ
(〒780-0935高知市旭町3丁目115番地 TEL:088-873-9100


高知県・馬路村・損保ジャパンは「協働の森づくり事業」のパートナーズ協定を結び、その記念として今回のシンポジウムを企画しました。2007年1月24日の提携セレモニーの際、橋本大二郎・高知県知事と上治克己・馬路村村長の環境保護に対する熱心なお話を伺い、私共企業としましても、地域の皆様と交流しながら森づくりに関われるという素晴らしい機会を頂いたと感謝しております。損保ジャパンは、15年ほど前から日本環境教育フォーラムと共同で「市民のための環境公開講座」を年十数回ずつ東京で開いていますが、今回のパートナーズ協定提携を機に高知で開催できることを大変喜ばしく思っております。このシンポジウムが、森と地域のつながりを考える良い機会となり、ご来場の皆様にとって有意義な時間になることを祈っております。



昨今、森が本来持っている様々な力が充分発揮されていないケースが数多く見られる中で、環境貢献に関心の高い企業と地域が一緒になって森の力の再生を図るのがこの事業の狙いです。

企業から森林整備に関わる費用を協賛金という形でご提供頂き、市町村はこれをもとに森林整備を進め、県は事業全体のコーディネートやサポートをし、市町村とともに事業を進めていくという役割分担をしています。

現在までにこのような協定を四国県内で11例ほど締結することができました。但し、こうした取組みは高知県だけで行っているものではなく、現在、全国26県で行なわれており、全国的に広がっています。その中で高知県はアクセスという点で決して有利な場所にあるとは言えませんので、常に新しい魅力をこの中に取り込んでいく必要があると考えております。

例えば「CO2吸収証書」の発行や、協賛企業11社を集めて行なう「パートナーズ会議」の開催なども検討中です。森林県である高知県は環境問題に目が向いているということをしっかりアピールして、これから先もパートナー企業が増えていくように頑張っていきたいと思っています。
協働の森づくり事業



山梨県・河口湖の近くに暮らし、現在6500人の会員がいる「自然暮らしの会」の活動エピソードや、その体験を通して清水さんが感じていらっしゃる自然と人間のあり方についてユーモアいっぱいの内容でお話し頂きました。




岡島 :最初に、高知県が全国に先がけて導入した森林環境税についてご説明をお願いします。

橋本 :この税を創設するための議論を進める中で考えたことの1つは、この税を頂くことの目的が何なのかということでした。「新しい財源になる」ということはもちろんありましたが、この税によって県民の皆さんに「何かに気づいてもらう・関心を持ってもらう」ことが、実はより大きな目標なのです。
高知県は84%という全国第一位の森林面積比率の県ですが、中々その手入れが行き届かなくなっており、森林が持っている保水機能や温暖化防止機能が落ちています。これを食い止めるために従来の予算の中からその配分を変えてお金を回しても、何も新しい動きにはなりません。
そのためにお1人お1人から税を頂くことで、森林の問題やそれと関わりを持つ都市部の問題に気づいて頂き、時には森林に足を運んで頂きたいという想いからこの森林環境税を導入致しました。

あん :森林環境税のシステムを有効な形で進めていくには、森のプラス面・マイナス面を明確にリストアップしていく必要があると思います。
農業の例で言うと、減農薬・減化学肥料・有機農業をやった場合に、それが環境にプラスの面ばかりではありません。このためデンマーク・オランダ・ドイツ等では、省エネルギー農業という試みがなされています。
これは林業にも言える事で、森林管理の裏にもエネルギー消費が必ずあり、第1次産業におけるエネルギー消費が今後問題になっていく中で、50年100年と持続可能な省エネルギー林業を構築して欲しいと思います。

上治 :県の森林環境税よりも前に、うちの村では森づくりの活動を支えるために「あなたの空気、保証します」という保証書を発行し会員を募集する取組みを行ないました。
森林環境税は500円ですが、これは2000円。
それでも私達の予想以上の申込みがありました。かつてはペットボトルの水やお茶が売れるなんて信じられなかったように、今の世の中では「生活に必要なものだからお金もいるよね」という感覚が広がっているのだと思います。

岡島 :今、日本中で大人も子供も森から離れていっているような気さえする中で、森林環境税というものが森への意識を高め、森へ人々を引き戻す役割を果たしていると思います。
皆さんは森が持つ力についてどうお考えでしょうか。

上岡 :私はほぼ団塊世代なんですが、子供だった昭和30年代頃は、雑木林や神社の境内などがたくさんあって、普段の生活や遊びの中で自然に森を取り込んでいきました。
ところが30年代後半から子供の遊びの対象の全てが人工的なものに代わっていき、やがて森が忘れられてしまいました。
当然その後の子供達はそこから取り残されてしまった訳で、この「協働の森づくり」のような取組みを通して子供達を自然に返す、いわゆる自然教育が必要ではないかと思います。

あん :私が通っていた小学校では、今でもやっているそうですが、1年生の時に森に行って貰ってきた苗を家に植えます。そうすると、毎日「自分の木」が気になって見に行ったりするようになり、自分と木の間に接点ができる。するとそこから自分と森への接点が生まれる…こういうことは大事だと思いますね。
またカナダにはツリープランターという、木を植えて収入を得る制度があるんですが、休暇に入った学生達がその活動をしたりしています。
高知県もこういった制度を導入して、若者を森に呼び込んでもいいのではないでしょうか。但し日本の場合は、夏休みでも2ヶ月程度と中途半端な長さなのがネックですね。何かに挑戦しようと思ったら休暇は4ヶ月位あった方がいいと思うので、教育制度自体を見直すことが必要かもしれません。

橋本 :先程あんさんから、林業のプラス・マイナスを明確にした方がいいという意見がありましたが、この点に関して少し補足をさせて頂くと、日本で最初にこの種の問題が出たのが、高度成長期の公害問題だと思います。
あの時代には、モクモクと煙を出している企業は国民の健康という面から見ると明らかにマイナスですが、GNPの成長という点からプラスとカウントされました。同様のことが環境問題にもあり、例えば再生紙を作るためには印刷部分と紙とを遠心分離するエネルギーをどうするのかというプラス・マイナスが起こります。
また、京都議定書についても、それだけが自己目的化して温室効果ガス削減活動ばかりになった場合、社会はどうなってしまうでしょうか。大切な事は、京都議定書をきっかけに私達が暮らしをどうしていくのかを見つめ直すことであり、森はそういったことを考えるきっかけを作る1つのフィールドではないかと思います。
協働の森という事業をしているのも、単に森林整備の協賛金を頂くということだけではなく、そこで色々な交流が起きて地域の方々も企業の方々もそこで何か気づいて頂けるのではないか…森林環境税の話と同様に「気づき」のきっかけを作るという事が重要だと考えています。
その点で言うと、この事業を通して企業の社員の方々が家族を連れて森にやって来て頂くような交流が生まれるのはもちろんいいことですが、私はもっと県内でも思い切った都市と山村の交流があったらいいなあと思っていて、各地域同士の子供達が森を舞台に交流し合うなどの仕組みを教育制度の中に組込むことができたらという構想についても前から検討しています。

岡島 :森林環境税を皮切りに森林づくりに積極的に取り組んできた高知県に、ぜひ教育の方面からも森に踏み込んでいって頂きたいですね。

上治 :「教育」というと、ついつい子供ばかりを考えがちですが、「大人の教育」を考える視点も大事だと思います。一口に「森で学ぶ」と言っても、子供、大人、観光客など、それぞれの立場によって、体験のレベルやそれに費やせる時間などが異なりますから、受入れる側がそれぞれに応じて考えてあげなくてはいけないですね。

上岡 :私達は100年後に生きる人たちに対して責任を持った生き方をしているか、これを「世代間倫理」というんですが、これが発達しているアメリカでは、自然を100年後に残したいという志のある人々が国立公園を作りました。
そのおかげで私達は、今あの雄大な自然を楽しむことが出来ます。私達もそういう風に未来世代のために何かをしなければいけないと思います。環境分野の中で、よく「Think globally, act locally」という事が言われますけれども、私達もそのように身の周りの事から行動していかないといけないですね。