CSOラーニング制度25周年イベントの集合写真

CSOラーニング制度25周年イベント

つなぎ、つながり、未来をつくる

CSOラーニング制度は、2000年の開始から25周年を迎えました。SOMPO環境財団はこれを記念して2025年11月8日(土)、CSOラーニング制度25周年イベント「つなぎ、つながり、未来をつくる」を開催。会場には全国から修了生のほか、受入先CSOや歴代の財団関係者など、約170名が集合しました。第1部ではパネルディスカッションなどを通じて、25年間の環境人材育成の成果やインターン活動当時のエピソードを振り返ったほか、第2部の懇親会では久しぶりに会った仲間と旧交を温めました。約4時間にわたったイベントを通じて、あらためて連帯と対話の大切さを共有し合う機会になりました。

開催概要

日時
2025年11月8日(土)
会場
第1部 損保ジャパン本社ビル2階大会議室
第2部 野村ビル2階コンファレンスルーム
参加者
CSOラーニング制度修了生(2000年度〜2024年度)、職員・関係者等

プログラム

第1部
第2部 懇親会
第1部

挨拶・講演・パネルディスカッション

開会の挨拶

あらためて育みたい「連携と対話」

SOMPO環境財団 理事長 西澤 敬二

西澤敬二氏

SOMPO環境財団は2000年に「木を植える人を育てる」という理念のもと、CSOラーニング制度を発足させました。関東から始まり、現在では全国5地区に活動を広げ、約1400人もの修了生が巣立ちました。また、2019年からはインドネシアでも同制度を展開しています。記念すべき日を迎えることができましたのも、関係者の皆さま長年にわたるご支援の賜物でございます。改めて御礼を申し上げます。

2000年は国連ミレニアム宣言が採択され、SDGsの前身であるMDGsが制定された年です。しかし、残念ながら現在は、米国や欧州でもサステナビリティ政策見直しが議論されるなど、サステナビリティの取り組みの後退が懸念されています。

そのような中、私は先月経団連のSDGsミッションの団長として、米国を訪問し、国連やアカデミア、経済団体、企業の幹部の皆さまと対談をしました。特に企業幹部からは、サステナビリティ推進に関して「決してあきらめてはいけない」という強い姿勢と覚悟を感じました。日本経済界としてもサステナビリティを引き続き推進していくことを決意するとともに、立場や国境を越えた「連携と対話」が課題解決のカギとなると改めて感じております。

本日のイベントが世代やフィールドを超えた「連携と対話」を生み、未来につながるネットワークを構築する、実り多き1日となりますことを心より祈念いたします。

講演

環境課題をめぐる現状および本制度への期待

環境省大臣官房総合政策課 環境教育推進室長 黒部 一隆 氏

環境省 黒部一隆氏

黒部様からは「SOMPO環境財団の取り組みと、皆さまのこれまでのご活躍に心から敬意を表します。また、本日をきっかけに新しいネットワークを形成して、環境保全活動に取り組んでいかれることを期待しています。」とCSOラーニング制度に対する期待の言葉を賜りました。

冒頭には、現状として、世界の人類の生産の半分ほどが、自然の循環に支えられていることや、地球温暖化、汚染問題、生物多様性の損失が、相互に悪影響を及ぼしていることなどをご紹介いただきました。

続いて脱炭素とネイチャーポジティブを達成するために重要なこととして、サーキュラエコノミーを成立させることの大切さや、個人のアクション、CSOラーニング制度のような、まわりを巻き込んで取り組むアクションの大切さを、事例とともにご紹介いただきました。

挨拶と報告

制度の歩みと現状

SOMPO環境財団 専務理事 中村 茂樹

SOMPO環境財団 専務理事 中村茂樹氏

中村専務理事は「25年にわたり制度を拡大しながらここまで来られたのは、ひとえに参加いただいた修了生の皆さん、受け入れていただいた団体、関係者の皆さまのご支援の賜物です」との挨拶の後、CSOラーニング制度の歩みを振り返りました。また、イベント案内に際して行ったアンケート結果も報告しました。

アンケート結果

修了後の進路

  • 6割が一般企業
  • 12%が公務員(環境省や林野庁、自治体)
  • 10%が自身で事業を立ち上げ
  • 7%が当時の派遣先も含めたNPO・NGO

また、今も何かしらの環境活動をしている方は約2/3。

現在、財団でも連絡先の分からない修了生が多く、修了生同士の連絡手段も限られているという課題を解決するため、安心して利用できる修了生コミュニティを新たに立ち上げたことも報告しました。

パネルディスカッション

様々な年次から修了生代表の4名が登壇し、CSOラーニング制度で印象に残っていること、現在の活動の中で生かせていること、制度がよりよくなるために期待していることなどを語り合いました。

登壇者

司会
小野 芳明さん(2006年度修了生)
パネリスト
伝井 真弓さん (2001年度修了生) 山﨑 雄太さん (2007年度修了生) 石塚 千夏さん (2015年度修了生) 河合 千尋さん (2022年度修了生)

小野 まずは自己紹介と、現在のお仕事をお聞かせください。

伝井 この制度の2年目、2001年のインターン生です。派遣先は日本自然保護協会で、主に広報のお手伝いをしていました。現在は東京都御岳ビジターセンターで自然解説員をしています。

山﨑 2007年度に日本環境教育フォーラムで、広報やイベント運営のお手伝いなどをしました。現在は株式会社マイナビで、学生向けのサービスを担当しています。

石塚 2015年度に愛知地区の地域の未来・支援センターに派遣され、関連NPOや活動家のお手伝いなどを経験しました。その後、人材関係の会社を経て、現在は中学の教員をしています。

河合 自然環境復元協会で、環境保全団体と一般市民をつなぐプロジェクトに携わりました。現在は長野県小海町のホテルに勤務し、森林セラピーなどの体験も担当しています。

  • 小野 芳明さん
    小野 芳明さん
  • 伝井 真弓さん
    伝井 真弓さん
  • 山﨑 雄太さん
    山﨑 雄太さん
  • 石塚 千夏さん
    石塚 千夏さん
  • 河合 千尋さん
    河合 千尋さん

小野 CSOラーニング制度に参加している間に、印象に残ったことをお聞かせください。

伝井 自然観察指導員講習会を受けたときに、指導員の方が「右と左の森の様子ちょっと違うの、気がつきますか?」などと、ただ歩いているだけでは気づかなかったことを、言葉で促してくれて、気づいたときにすごく感動しました。それがきっかけで「自然と人をつなげる仕事がしたい」と思いました。

石塚 千夏さん

石塚 たった1人で、木こりとして森林も川も人々の暮らしも守る活動をしている方と出会ったのが、すごく大きかったと思います。当時の私は「山=自然がたっぷり、めっちゃいいところ!」と思っていましたが「大好きな山は、深刻な問題だらけ」ということを知りました。何よりも大きすぎる問題に1人で立ち向かっている姿を見て「すごく勇気があるな」と思いました。実はインターン修了後に、その方の力になりたいと思って、山に関するクラウドファンディングをしました。そのときにCSOラーニング制度のメーリングリストに流していただいたら、知らない世代もたくさん力を貸してくれました。「自分もちょっとだけ勇気を出せば、知らない人たちが力を貸してくれるんだ」と思ったのが印象的でした。

小野 今の生活の中で、CSOラーニング制度での経験は、どういった面で生きていますか。

山﨑 インターン活動をする中で、多様な立場で環境活動をしている方の話を聞いたり、ワークショップなどに参加する中で、様々な活動を知ることができました。人に伝えていくことへの関心も強まり、現在、会社の中で担当しているマーケティング職にも生かされていると思います。また、いろいろな団体に実際に行って体験した経験が、自己効力感につながったと感じています。

河合 千尋さん

河合 インターン先での体験が今の仕事でのモチベーションや、職業選択に影響していると思います。活動中に自然の中で仲間との対話を通して、自分と向き合うようなプログラムの運営に関わったときに、参加者が「どう環境に関わっていったらいいだろう」と、前向きに考える機会がありました。私もそのような考え方の可能性を、すごく感じるようになりました。今、勤務先のホテルでは、訪れた方々が環境や地域にとって少し優しくなれるような体験を作ろうとしています。そのようなモチベーションをきちんと持ち続けられることが、この制度で得られた一番大きなことと感じます。

小野 皆さんのお話から、制度の理念である「木を植える人を育てる」のように、課題を見つけて自分で行動していく人を育てることに、この制度が非常に貢献していると感じました。次にこの制度が今後もっとよくなるために期待していることや、方法をキーワードとともにお聞かせください。

パネルディスカッションの様子
パネリストの背景には「CSOラーニング制度といえば何ですか?キーワードを挙げてください」というアンケート結果のワードクラウドが投影されました。数が多いものほど大きく表示されています。
山﨑 雄太さん

山﨑 「連鎖」を考えました。制度の理念をより広めていったり、つなげていったりすることを考えると、大学生時代から「連鎖」を起こして、普段は関わりのない若年層や社会人とも、こういった制度でつながっていくと面白いと思いました。

河合 私は「つながり」です。移住を伴う就職をしたときに、環境などに関心がある仲間と出会う難しさを感じた一方で、つながれたときのエネルギーのようなものを強く実感しました。違う領域でも、ある程度同じ関心を持っている人たちとつながり、一緒に何ができるのか考えられる機会が、この先も続いていくといいと感じています。

石塚 私は「足元から」です。コロナ禍前までは、ラーニング制度を修了した全国の仲間たちが集まる機会がたびたびありました。コロナ過を経てライフステージが変わったこともあり、集まることが難しくなりましたが「将来はCSOラーニング制度で体験したことや、全国の仲間が集まってやっていることを、お互いの家族同士で行えるといい」と話したことがあります。ですので、まずは一番身近な家庭から、CSOラーニング制度で得たことを伝え広めていくことが今後期待したいことで、自分もやりたいと思っています。

伝井 真弓さん

伝井 私は「続ける」という言葉を挙げます。25年続くのは大変なことだと思うんです。今ここに約170人の仲間がいて、今日は参加していない方も含めたら1400人近くの卒業生がいるのは、すごいことだと思います。なので、ぜひSOMPO環境財団には50周年、100周年を目指していただきたいと思います。1人の力はものすごく小さいものですが、これだけやる気があり、環境に関心のある皆さんが集まったら、すごくいろいろなことができると思います。

小野 このたび新しくコミュニティ・プラットホームができるので、皆さんもぜひ登録していただき、この制度の一層の発展に協力していきましょう。本日はありがとうございました。

第1部閉会の挨拶

強く感じたCSOラーニング制度を続ける価値

SOMPOホールディングス株式会社 グループCSuO 執行役員常務 酒井 香世子

SOMPOホールディングス 酒井香世子氏

SOMPOグループでは、1992年に当時の安田火災の社長がリオの地球サミットに経団連のミッションの団長として参加をしたことを契機に、環境財団の設立をはじめ、環境課題に関して早期から取り組みを進めて参りました。

また、本制度の奨学金の一部は、SOMPOグループの役員・社員の寄付で支援をしております。このことが、社員自身のエンゲージメントの向上にもつながっていることを喜ばしく思っております。

本日は多彩な分野でご活躍の皆さまからお話を伺い、勇気をいただきました。また、行動する人がとても多く、自分で選択して行動しているため効力感やモチベーションが高く、CSOラーニング制度を続けることが価値につながると感じました。

本制度の100周年への期待を一心に受け止めましたので、まずは次の25年に向けて、お集まりの皆さまとのつながりから、新しいコラボレーションが生まれることを期待したいと思います。

SOMPOグループとしても皆さまとの連携を深めるような取り組みを強化し、国内外のステークホルダーの皆さまと共に、地球規模の社会課題解決に向けて努力を続けてまいります。

第2部

懇親会

第2部では、修了生が交流を深める場として、懇親会を開催しました。

乾杯の挨拶

進行役 細井 千聖さん(2000年度修了生)

細井千聖さん

私は現在、SOMPOリスクマネジメントでTNFD(企業の自然関連情報開示)の支援に関わっています。25年前、企業が自然関連の情報を把握し、開示をしていかないと、企業の経営リスクになる時代が来るとは思っていませんでした。その当時にお世話になった団体の方は「われわれの仕事の目標は、われわれの存在意義がなくなること」とおっしゃっていました。

現在は企業自身が自然関連の情報を把握し、むしろ団体と協業していく時代に変わりつつあります。このような変化は、生活の中での小さなつながりや連鎖、足元から何かをやっていく活動、ちょっと勇気を出した活動などが積み重った結果だと思います。本日はたくさんのつながりを作っていただき、50年、100年と制度が続いていくよう、活かしていければと思います。

受け入れ団体からのメッセージ

インターンを受け入れていただいた団体の代表から、ご挨拶をいただきました。

公益財団法人 オイスカ 諸江 葉月 様
公益財団法人 オイスカ 諸江 葉月様

毎年、新しい風を運んでいただけるだけではなく、新しく入ってきたラーニング生が、次のラーニング生に活動をつなげてくれて、私たちにとって欠かせないプログラムになっています。

修了生がさまざまな分野で活躍されていることは豊かですし、私たちと同じ思い、経験をした人たちがいろいろな分野で活動を広げてくれていること自体が、このプログラムのすばらしいところだと思っています。この機会を生かして、つながりを続けていきたいと思います。

認定NPO法人 JUON NETWORK 遠藤 紗穂里 様
認定NPO法人 JUON NETWORK 遠藤 紗穂里様

インターン生の皆さんには、森林ボランティアリーダーを養成する里山森林ボランティア入門講座の企画から当日の司会進行までを担っていただいています。

インターンを通じて、JUONの会員や寄付者、他団体とつながっていただく人もいて、とても光栄に思っています。今後ともこういったつながりを続けられることを期待しています。

NPO法人 樹木・環境ネットワーク協会 後藤 洋一 様
NPO法人 樹木・環境ネットワーク協会 後藤 洋一様

毎年、とても意識の高い優秀な学生さんを派遣していただいています。広報の側面で私たちにはない視点で活動を発信していただくなど、とても助かっています。

ますますこの環境の分野が、社会的にもとても重要な基盤になりつつありますので、これからもこの活動に携わっていきたいと思います。

認定NPO法人 環境文明21 藤村 コノヱ 様
認定NPO法人 環境文明21 藤村 コノヱ様

受け入れ団体にとってこのインターン制度は、若いエネルギーを投入していただけるので、その時代の若者が何を考えているのかを知る機会にもなっています。

今は環境問題も含めて、先を見通しにくい世の中になっていると思いますが、修了生の皆さんはインターンや、その後にさまざまな経験をしたこと、たくさんの仲間がいることに誇りと自信を持って、これからも活動をしていただきたいと思います。ぜひ持続可能な社会づくりの先頭に立ってください。

公益財団法人 日本自然保護協会 髙川 晋一 様
公益財団法人 日本自然保護協会 髙川 晋一様

25年続けてきて、1400人の修了生がいらっしゃるこのつながりは、本当に素晴らしいと思います。今日、特に感じたのが「うらやましい。私も学生のころにこれを知っていたら、入りたかった」ということです。

現在、日本の環境保全の状況は日に日に悪くなっていますが、本日お集まりいただいた皆さんが、今日のつながりをきっかけに新しい事業を作る力になる場合もあります。ぜひつながり続けて、この制度を次の25年、50年と、継続していってほしいと思います。

締めの挨拶

足立 晴菜さん(2024年修了度生)

足立 晴菜さん

最後に一本締めを行った足立晴菜さんからは、次の挨拶をいただきました。

私はインターン活動の経験を通じて、どのような変化も最初は小さな行動から始まるものの、多くの仲間と力を合わせ、継続して積み重ねていくことで、個人の力を超える大きなインパクトを生み出せることを身をもって学びました。

このコミュニティが今後も活発に交流を重ね、それぞれの思いと行動が結びつくことで、さらに発展していくことを願っています。