◆パネリスト

市田 則孝氏
(財)日本野鳥の会
常務理事
中野 良子氏
(財)オイスカ 会長
岩崎 美佐子氏
(日本国際ボランティアセンター
カンボジア代表)



◆コーディネーター


岡島 成行氏
(社団法人日本環境教育フォーラム
常務理事)



1.アジアにおける日本のNGOの具体的な活動内容

(財)日本野鳥の会(市田則孝氏)

野鳥は生態系の高位にあり、環境指標として優れている。
また、生物多様性の指標ともなるため、野鳥を指標として生物の多様性を調査するIBA調査(Important Bird Areas)が1989年にグリメット他によりヨーロッパで行われ、大きな成果を上げた。
アジアでも1997年より日本野鳥の会を中心に行われている。
このような調査活動は、野鳥という、国から国へとわたる渡り鳥がテーマのため、国際協力を進めやすい。

【アジアの野鳥の生息状況】
世界には9000種の野鳥がいる。
開発などによる生息地の劣化で、トキやアホウドリのように絶滅に瀕した野鳥が世界各地に見られる。
全体の約12%にあたる1,111種が絶滅危惧種として考えられている(BirdLife 1994)。
そのうちの約400種がアジアの野鳥で、アジアにおける大規模開発が深刻な影響を与えていると思われる。

絶滅危惧種上位5ヶ国

1.インドネシア 104種
2.ブラジル 103種
3.フィリピン 86種
4.中国 86種
5.インド 71種

【アジアにおける自然保護、野鳥保護の活動】
ツル類などの渡り調査
1990年にNTT、NECの協力を得て、読売新聞との共同調査としてスタートした。
人工衛星を使用して渡り鳥を追跡する方法でコハクチョウ、マナヅル、ナベヅル、アネハヅル、オオワシ、ホウロクシギなどの渡りが解明され、渡りのルート上の重要湿地が特定できたほか、繁殖地がよく分かっていない絶滅危惧種クロツラヘラサギの衛星追跡が、現在行われている。

これらの成果を基に、ツル類に関しては日本から朝鮮半島を経てロシアまでのツル類生息地の国際保護区ネットワークが発足し、情報交換や共同事業などが実施されている。

連絡先/
(財)日本野鳥の会
〒151−0061 東京都渋谷区初台1−47−1小田急西新宿ビル1F
TEL:03−5358−3510 FAX:03−5358−3609

鳥と緑の国際センター
〒191−0041 東京都日野市南平2−35−2
TEL:042−593−6871 FAX:042−593−6873




オイスカインターナショナル (中野良子氏)

オイスカは、1961年10月、「物質と精神が調和した繁栄を築く」という基本理念を掲げ、オイスカインターナショナルとして日本で発足し、1969年には財団法人化した。
宗教や民族、主義主張を超えた人類大家族精神に基づき、途上国の産業開発、人づくり協力、環境保全などの活動を行っている。主にアジア地域を中心に南米各国などにおいて、以下のようなプロジェクトを行っている。

【活動事例】オイスカの緑化運動「苗木一本の国際協力」
苗木一本の国際協力(ラブグリーン)運動は、1980年から開始、以下のような活動を行っている。

今後の展望としては、この植林プロジェクトをオイスカ活動の大きな柱として拡充し、国際機関、政府、企業、NGO等とのタイアップによって、緑化活動を推進していきたい。

連絡先/
財団法人オイスカ
〒168−0063 東京都杉並区和泉3−6−12
TEL:03−3322−5161 FAX:03−3324−7111
ホームページ:http://oisca.org



日本国際ボランティアセンター(岩崎美佐子氏)

日本国際ボランティアセンター(JVC)は、1980年タイで誕生した市民国際協力団体である。
難民救援から活動をはじめ、現在では地域開発や環境保全活動に取り組んでいる。
JVCの活動目的は、国際社会のなかで、社会的、精神的、物理的に困難な立場を強いられているアジアやアフリカの人々に協力すると同時に、地球環境を守る新しい生き方と人間関係をつくりだそうとすることにある。
現在、タイ、カンボジア、ラオス、ベトナムなど東南アジア諸国のほか南アフリカ、エチオピア、パレスチナなどにも現地事務所を開設し様々な活動を行っている。

【活動事例】カンボジアにおける持続可能な農業と農村開発
カンボジアは、総人口の8割以上が農民であるが、農村生活は長い内戦などの後遺症、森林消失、干ばつなどにより厳しいものとなっている。
そのため農村地域の安定した食糧供給、健康管理、教育の機会が保障されることが重要な課題となって いる。
JVCでは、それまで続けてきた保健衛生活動を給水を主とした地域開発事業に展開させ、1994年から「農村開発と持続可能な農業普及活動」に発展させ、今日に至っている。

「農村開発」の具体的な活動としては、飲料水、生活水確保のための井戸掘削、コメ備蓄のためのコメ銀行の運営、牛銀行、女性が自立できるための貯蓄グループ、環境教育などがある。
「持続可能な農業普及」の具体的な活動は、家庭菜園、たい肥づくりの奨励、稲作管理、裏作栽培の促進、苗木作りなど、多岐にわたっている。

連絡先/
日本国際ボランティアセンター(JVC)
〒110−8605 東京都台東区東上野1−20−6丸幸ビル6F
TEL:03−3834−2388 FAX:03−3835−0519



コモンアジェンダ円卓会議(岡島成行氏)

「インドネシア環境教育プロジェクト(1998年度事業の概要)」
外務省のコモンアジェンダによるプロジェクトで、外務省と経団連が資金を提供し、NGOが実際の活動を行うという、今までにはなかっためずらしいケースだ。
インドネシアでの環境教育の普及やインドネシア国内NGOの育成・支援が主な目的であるが、環境教育は大変幅広く、途上国における環境教育とはいったいどのようなものが望ましいのか、議論を重ねてきた。
その中で、画一的なものではなくきめ細かな作業となることが予想され、(社)日本環境教育フォーラムや(財)日本野鳥の会、(財)オイスカなどの3つの日本の環境NGOが中心となってインドネシア のNGOと合同で、各プロジェクトを行った。
今後3年計画でこの活動を推進していく予定。

事業内容は

となっている。




2.各NGOの課題や今後の展望についての意見交換


(1)アジア各国で運営するための資金調達はどうされているのか

・ 中野氏(オイスカ)。
オイスカは企業や団体・個人による会費収入のほか、外務省の草の根無償資金援助(現地のNGOに対して現地にある日本大使館が資金援助を行う)やNGO支援(日本にある団体本部への資金援助)などの資金援助を受けている。

・ 岩崎氏(JVC)。
JVCは国連からの委託金や日本政府ODA、国際ボランティア貯金などのほか、個人からの寄付金や会費収入などで活動を行っている。
外務省の草の根無償資金援助もいただいているが、この資金はモノの購入費が主で、人件費は出ない。
学校を建てる資金援助は得られても、そこで働いてもらいたい先生への給与をどこから確保できるかというように、ソフト面 に援助がないのはつらい。

・市田氏(日本野鳥の会)
地球環境基金など以前にくらべて、NGO活動に対する助成基金が増えてきているのは確か。
問題なのは、ほとんどの助成基金が人件費には使えないなどの「使途の制約」があること。
ただし、経団連自然保護基金は人件費に対して援助額の2割くらいは認めていただけるようだ。
これがモデルになって他の基金などでも人件費が認めてもらえるよう変わっていけば、NGOにとって非常にありがたい。



(2)NGO活動発展のためのこれからの課題

・中野氏(オイスカ)
オイスカでも資金調達には奔走しているというのが実状である。
私たちが活動を始めた頃はまだNGOという言葉もなかったし、世間からの理解もなかった。
また、活動を行っている各国現地でも、国内での貧富の格差が大きく、国の中の富める人々に説得しながら寄付金を募るなど、一言では言い表せない苦労がある。
この20年位がようやく社会的にも認められ始めた感がある。
まず実績をつくり、活動を行っている現地内できちんと評価、信頼を得ることが重要ではないかと思う。

・市田氏(日本野鳥の会)
活動が広がれば広がるほど、周囲からのリクエストが増えてきて、応えきれないという状況もある。
要求される活動に対して、こちら側の対応が間に合わないということである。
ボランティア制度などがもう少し発展すれば、力になるのではないか。

・岩崎氏(JVC)
JVC東京事務所には常時200人くらいのボランティアがいて、学生やシルバー世代の方々など多岐にわたっている。
市役所から1年間人材を派遣されたり、海外へも無給だが経験になるということで、ボランティアの身分で現地で活動を行っている人がいたりと、少しずつ認識が変わりつつあるという手応えを感じている。
カンボジアでは、生活するのにも大変なのにボランティアをしてくださる現地の人もいて、いろいろな人たちに支えられていると実感している。
ただし、現在は、様々な人たちの善意や熱意に頼っている状況であり、資金的にも自転車操業である。
次のステップとして、資金が保障される体制を整えていきたい。

・市田氏(日本野鳥の会)
日本と欧米のNGOの違いは、専門的なスタッフをどれくらい持っているかということで、資金調達も含め、団体内部の専門スタッフ養成などが、各NGOが抱えている共通 の今後の課題ではないだろうか。
 
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