講師紹介
荻野 和彦氏
昭和11年京都生まれ。昭和40年京都大学大学院農学研究科博士課程修了。
京都大学農学部助教授を経て、昭和58年から愛媛大学農学部教授、平成10年から滋賀県立大学環境科学部教授。
農学博士。専門は森林生態学。
1.東南アジア熱帯林をとりまく環境問題
【気候変動枠組み条約(地球温暖化対策に伴う施策)】 1997年12月に京都で開催された「気候変動枠組条約第3回締約国会議」では温室効果ガス削減について以下の内容が締結されている。
例えば、日本がアジアのどこかの国の植林・造林事業に資金を供与すれば、日本が排出するCO2量から、その造林事業によって排出される量を差し引けるということである。
一見、聞こえが良いように見えるが、これは、経済問題を森林生態系に持ち込むことになる。
一つ間違えば、資源保有国である東南アジア熱帯諸国と、技術・資本保有国の日本の間に、新たな、深刻な南北問題を生み出しかねない。
【生物多様性条約(生物多様性条約に関連する施策)】
目的:生物多様性の保全、その構成要素の持続可能な利用、および遺伝資源の利用から生ずる利益の公正かつ衡平な配分を行う。
この条約によって、資源開発の持続的な利用、資金供与、知的所有権など、経済的な利益を伴う問題を抱えることとなった。
「生物多様性条約」と聞くと「生物多様性を保全するための条約」だと理解する人が多いが、じつは、保全するという目的の他に、「持続的に利用する」という意味がある。
つまり、生物資源をどう利用するのか、利益の配分をどうするか、という論議である。
かつて、森林資源といえばそれは木材を指し、木材を板や柱などに利用することであった。
しかし、「生物多様性」として森林資源をとらえるときには、すべての遺伝資源を含むことになるのである。
木部の直接的な利用というだけでなく生物資源の内容が変わってきたこと、利用の仕方が変わってきたことに注目する必要がある。
2.東南アジア熱帯林の生態的特徴
3.生態系の修復は可能か
生態系の修復は容易なことではないが、多数の動・植物、微生物が精緻なシステム、生命の連環体を作り上げていることを念頭において、人為的に植樹造林をすることから始めなければならない。
最近では、林業としての森林造成だけでなく、自然に似せた森づくりも行われるようになってきた。
東タイの農民ウィブンさんは、直接食用できるドリアンやマンゴスチン、ヤシ、コーヒーなどの擬自然林をつくり、この森によって家族を食べさせることに成功した。
マレーシアのサラワク州では、日・米・マの共同で熱帯林生態系の修復実験を行っている。
という視点から取り組んでいかなくてはならない。
参考文献
「温暖化する地球」 | 田中正之著 | 読売科学選書23 読売新聞社 | 「地球の掟」 | アル・ゴア著 小杉隆訳 | ダイヤモンド社 | 「熱帯雨林を考える」 | 四出井綱英・吉良龍夫著 | 人文書院 | 「熱帯雨林をまもる」 | 熱帯雨林保護検討会編 | NHKブックス644 日本放送出版会 | 「地球環境再生への試み」 | 田村三郎著 | 研成社 |
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